No.1768

題名:ぴっくっと
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1767の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 人は知らず知らずに影響を受けている。特に、その影響が自らにとってインパクトのあるものであったならば、生涯、それが糧となってCreateに役立つ。要は、そのインパクトのシャワーをある年齢で沢山浴びたかどうかが、Createrとしての資質となる。それを問われると、自らの資質は無に等しい。だから生み出せない。生み出したつもりでも、それが人へのインパクトにはならない。その程度のものだ。だから、ここでは偉そうなことは言えない。きっと、それは、こぶちゃんが死んだ、から。

着陸船に急いで戻り、船内の窓からこぶちゃんを眺めた。やはり倒れたままびくともしていなかった。

幼いころからペットとしてラクダのこぶちゃんとはいつも一緒だった。宇宙に一緒に行って、月の砂漠を歩こう、こぶちゃんと。という誓いが立てられたのも、こぶちゃんがいたからだ。

そのこぶちゃんが死んだ…。

流星に敗れ、破れたのだ。

地球に交信した。

僕:「こぶちゃんが、流星にあたり、どうやら死んだようです」

船内で「New Space Music」の曲が流れながら、僕は悲嘆にくれた。交信しても地球からのメッセージが届かない。これは時間的な遅延とは異なる。だれも、応答していない。

こぶちゃんがいる時は、ラクダった。なぜなら、文句をたれればそれでよかったからだ。この先、どうしようか。この先、どうしようか…。

まったくアイデアがないままに、僕は着陸船の中でもんもんとしていた。気になって、船外のこぶちゃんをみると、ぴっくっと動いた気がした。それも気のせいだろう。

でも、このまま月の表面にこぶちゃんを置いておくわけにはいかない。こぶちゃんのお墓を作らねば。

スコップを持って、こぶちゃんの死骸の横に穴を掘った。月は地球の重力の1/6。だから、容易く穴が掘れた。でも、塵が、月の土の塵が、ちらばりそこら中に浮遊していた。ふと見ると、また、こぶちゃんがぴっくっと動いている気がした。

 
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