No.1645

題名:と祈った
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1644の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 その化石のような黒いダイヤ、たぶんしじみの貝殻をもっていると、僕は守られている気がした。そうだ、あの時の晴れた日の美しい太陽からの恵みと同じく、僕は守られているような、そんな気がした。大事にその化石の貝殻をポケットにしまうと、読者さまからの風が再び吹き荒れた。やっぱり読者さまは、評論には厳しい。三文は払えても、それ以上は払えない。この三文小説には…。のような感じで、僕を絶えず叱咤してくれる。でも、それは裏を返せば、激励なのだ。でも、その容赦ない風は、テントが再び滑り出す原因ともなった。(ああああああああ…)
 その後、フロアの裂け目が大きくなり、テントから放り出されたと思うと、「突然、足をすくわれた。体が氷にたたきつけられ、一気に加速する。アイスアックスのピックスで斜面を引っかいて、滑落を止めようと試みる。少しスピードがゆるんできたと思ったら、両足にかかる圧力がなくなった。次いで、体にかかる圧力も…。僕はくるんと回って、背中から空中に落ちていった。目の前を氷の壁が流れてゆく。」1)。「右足に激痛が走った。」1)。「僕はここで一人死ぬ。雪に埋もれて、永久に見つけられることもなく。死ぬことは一つの出来事だが、姿を消すことはもっと深い恐れを誘い出す。」1)を一部改。
 その時、ポケットの中の黒いダイヤが輝いた。

(カツオくん。大丈夫。カツオくんがなんでわたしに魅かれたのか。そして、琉花にも魅かれたのか。
その秘密が愛の頂きできっと分かる。カツオくんなら、きっと見つけてくれる。
カツオくんなら、きっとそのことを分かってくれる。
晴美は、そう、信じている)

 晴美さんの声が耳元で聞こえた。そうだ。ここで、僕は死ぬわけにはいかない。
 そうして、僕は「だめな右足の膝下を両手でつかんだ。鋭く息を吐き、歯を食いしばり、目を閉じて、引き寄せた。うめき声を上げないようにしたが歯の間から漏れ、両目には涙がたまった。まばたきをして涙を落とし、クランポン(ドイツ語でアイゼン)を右の登山靴にしっかりと固定した。」1)。その過程で僕は、「もう一度、晴美さんに会いたい。もう一度、琉花を抱きしめたい。」1) を一部改と祈った。

(読者さま:スティーブ・ハウスくんのおかげで、なんかええ感じになっとるやないか…。)

 僕は、アイスアックスを両手に、再び登攀を始めた(図)。

図 登攀中2)

1) スティーヴ・ハウス: 垂壁のかなたへ. 白水社. 2012.
2) https://www.pinterest.jp/pin/737745982695708765/ (閲覧2020.2.28)

 
pdfをダウンロードする


...その他の研究報告書もどうぞ