No.1638

題名:ある意味、グランドジョラス北壁の登攀
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1637の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 コンブチャン:「アサリちゃん。わたし、ちょっと飲みすぎちゃったみたい…。トイレ行ってくるね…」

 コンブチャンがトイレに行っている間、アサリもほろよいなのか僕に対して、いろいろと質問ぜめにした。

アサリ:「兄ちゃん。コンブチャンと結婚しないの? そうしたら、ずっとイソベ家にコンブチャンいることになるし…」

「でも、アサリ。そんなことよりもコンブチャンの過去の記憶を戻すことが先決じゃないのか?」

アサリ:「そうだけど…。でもね、コンブチャンといっしょにいると、お姉ちゃん以上の存在に感じて…」

「どういうこと?」

アサリ:「特にね。コンブチャンといっしょに部屋で寝ていると、わたし、コンブチャンからの香りにまいっちゃうの。なんでかな…。分かんないけど、ずっと昔から、コンブチャンのこと知っているみたいで、コンブチャンから離れられない気持ちになるんだ…。その気持ち、たぶん兄ちゃんには分かんないかもしれないけど…。わたし、コンブチャンがとっても愛しいの…。お姉ちゃんという存在以上に…」

 その言葉を聞いて、僕がかつて晴美さんに感じた時とおんなじ気持ちであったことに気づいた。アサリからの言葉は、まさにそんな感じだった。香り…、そういえば、コンブチャンからは、磯の香りがしていた。それが、アサリを惑わしているのか…? それが原因なのか…?

アサリ:「兄ちゃんはどう思っているの? コンブチャンのこと。わたし、正直に言うと、コンブチャンとずっと一緒に居たい。ずーっと。でも、コンブチャンの記憶が戻ると、どうなるのかな?」

 それをきっかけに、僕はかつて晴美さんという人がいたことを正直に話した。そして、晴美さんからの香りに、僕は、どうしようもなくなったことも正直に話した。もちろん琉花のことも包み隠さず話した。それがアサリにとって、どういう意味があるかは、今は分からなかった。大学生になったばかりのアサリには、言うべきでは話ではないとも思いつつも、やはり話すべきだという思いが強かった。この先、アサリにも同じ想いをさせてはいけない。ただ、愛の頂きは、何度山を登ろうとも見えてこない。だから、ある意味、これを話すことはグランドジョラス北壁の登攀でもあった。

アサリ:「やっぱり、兄ちゃんもそんなことあったんだね…。わたし、おかしいのかなと思ってたけど、ちょっと安心した」(図)

図 安心中1)

1) https://www.pinterest.jp/pin/737745982695501759/ (閲覧2020.2.21)

 
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