No.1586

題名:説教の合間に
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1585の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 大切なものは失ってから、始めて分かる。それがかけがえのないものだったということに。

 そのきっかけを与えてくれたのが、あの当時に別れた琉花だった。伯父の説教(No.1585)の合間に、眺めていた窓越しの風景から、ふと目の前にあの時の琉花が現れたようだった(図)。

「カツオくん。わたし、カツオくんのこと信じていたのに、愛してるといってくれたのに、あれは嘘だったの?」

「嘘じゃない。本当だ」

「じゃぁ、なんで琉花じゃなくて、晴美となの。よりによって、あのとき、あんなとこで。なんでそんなひどいことするの。他の子だったら、許してあげる。でも、晴美とだなんて、絶対に嫌」

「もう、カツオくんのこと信じられない。信じられないよ。わたし、カツオくん一筋だったのよ。ひどい、ひどいよ。なんでそんなひどいことするの。晴美とは何にもないって言ってたじゃないの…。あれは嘘だったの?…」

図 琉花1)

「…」

「もう二度とわたしの前に姿を見せないで。もう嫌なの、こんなの。わたし、こんなの…」

 普段、簡単には泣いたりしない琉花の目から一筋の涙がこぼれた。僕はその涙で、ようやく気づいた。こころの中で、大切なものを失っていたということに。琉花というかけがえのない存在を見失っていたことに。それがきっかけだった。それからというもの僕は、愛に対して真摯に向かい合うように、変わったのかもしれない。でも、もう戻ることはできない。あの当時には…。

組合長(伯父):「カツオくん。だから、いっつも言っとるじゃろ。そういうこっちゃ…。だからな…

1) https://www.pinterest.jp/pin/737745982694716206/ (閲覧2020.1.25)

 
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