No.1516

題名:呼び込み
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1515の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 「おはようございます」

「おっ、あんちゃん、ガエールくんだっけ。今日からおっちゃんとのラーメン道の修行だべ。よろしくな」

 そうして、おやっさんの猫ラーメンで、僕は従業員として働くことになった。これから目指すラーメン道の極みに、胸が高鳴った。

「まずはスープの仕込みやで。こーして、こーして、こーするんやー。まっ、今日はよう見とけや」

その丁寧なまでの作業に、やはりおやっさんはラーメン道を究めた職人だった。猫ラーメン、いやおやっさんを選んで正解だった。僕は昔からこの手の選択に迷うことはない。なぜなら物心のついたころから、他人のオーラが見えるからだ。おやっさんのそれは、とても輝いていた。間違いない。この人には何かある。

「ガエールくん。そろそろのれんだしてーや。営業はじめるべ」

 営業を始めた。しかし、なかなか人はこなかった。

「ガエールくん。実はな、最近、この界隈でラーメン店が多くなってな。ちょっと以前より人が、くる人が、少ないんや。おっちゃんは、ラーメンには自信あるんやけど、他の店はな、サイドメニューもよーけあってな。本当にうちのラーメンが食べたい人しか、最近、こーへんのや。すまんな。初日からすまんな、こんなこと告ってもうて。昔は繁盛してたんやけどなー」

「いやいや、おやっさんのラーメンは、日本一、いや世界一ですよ」

「そうか。ガエールくん。ええやっちゃな」

「僕、店のおもてで呼び込みしてみますよ」

「そうか。ありがとな」 そうして、店の前に立った(図)。

図 店の前にて1)

1) https://www.pinterest.ch/pin/222224562849345965/ (閲覧2019.12.20)

 
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