No.1476

題名:隠しごとはできません。
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1475の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 世の中の神羅万象には、必ず連鎖がある。よいことをすればよりよくなり、わるいことをすればよりわるくなる。人のうわさもそうだ。よいうわさを流せば、自らへのよいうわさに連鎖し、わるいうわさを流せば、自らへのわるいうわさへと連鎖する。それがじわじわとその人の評価につながる。これが連鎖。まさにチェイン。鎖は、永遠に途切れない。ぐるぐると廻るのだ。巡るのだ。だからこそ、エタニティ・リング。永遠なるさだこなさだめ。そのさだめに従えば、豹変していく叔母の背後には(No.1473)、我がGaeele家の血筋には、過去に何かあったのだろうか。いや、きっと何かあったのだ。あったに違いない。

「大丈夫?」(No.1475)

 あやみお嬢さまは、中条あやみお嬢さまは、心底から心配してくれていた。そうだ、正直に、やはり正直に、うぬの過去について、ここでお嬢さまに話しておくべきかもしれない。

「あやみお嬢さま。城崎温泉へ向かう途中、カリーナ号の中で、うぬのイギリス時代の愛しい人、カリーナについてお話ししました(No.1466)。今、昏睡から目覚めて、はっきりとうぬの過去を思い出したのです。やはり、うぬは、あやみお嬢さまの執事として、隠しごとはできません。うぬの過去にあった出来ごとを、あやみお嬢さまにお話ししてもよろしいでしょうか?(図)」

「江後ガエール(うぬ)さんがそういうなら…。いいよ。聞いてるから」

 そうして、イギリス時代の我がGaeele家の伯父と叔母のこと、そこでの叔母の様子、そうして、記憶をなくした顛末について、言葉を選びながら、あやみお嬢さまに話した。お嬢さまは、時に、きょとんとしながら、時に、耳を傾けながら、真剣にうぬの話を聞いてくれた。

「江後ガエール(うぬ)さんに過去のことを聞いても、いつも何も答えなかったのは、そういうことだったのね。記憶がなくなっていたんだ…。でも、その話って怖いね」

図 うぬ1)

「はい。あやみお嬢さま」

1) https://www.pinterest.jp/pin/748301294314052504/ (閲覧2019.11.29)

 
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