No.1327

題名:運命を狂わす歯車のように
報告者:ダレナン

 それは、5年ほど前のことかもしれない。実際はもっと短くて、3年ほど前かもしれない。詳しい時期は覚えてはいない。覚えていないというよりも、思い出したくないのかもしれない。でも、その時から何かが変わった。それは、自分の中の意識かもしれないし、考え方かもしれない。いずれにせよ、ある時点をもって、自分の中の何かが大きくはじけた。それが、ある女性との出会いによって起こった出来事であったといっても過言ではないかもしれない。その時のことは、今でも、克明に記憶されている。

「ねぇ、ナカザトサトルくん? 私のこと、覚えている?」
「えーっっと?」
「ほらっ、この前のことだけど。○○の講演会で、テーブルが一緒になったイシハラですけど。イシハラサトコです。」
「あっ」

思い出した。イシハラさん。はきはきとして、聡明な人だなーと思っていた人だ。でも、あの時の講演会のワークショップは、無我夢中で、ほとんどのことが記憶にない。会社からの依頼での受講だったけど、思ったよりも楽しかったことだけは覚えている。そういえば、そのワークショップで、偶然に一緒になって、そのテーブルで進行をうまくしていたのが、イシハラさんだったことを思い出した。

「あれから、うまくまとまった」

そうだった。現在の仕事にどのように活かすのかが、その受講後の後刻の課題となっていたのだ。めんどうだなーと思いつつ、すっかり忘れていた。日常の業務に追われ、完全に忘れていた。

「その感じだと、忘れていたみたいね」
「うん」

イシハラさんに指摘され、ようやく気づいた。その課題の提出が、あと一か月後ぐらいだったかもしれない。思い出したのもつかの間、なんで、ここに、イシハラさんが現れているのかが不思議になった。確か、うちの会社とは無関係の業務の人のはず。なんで、目の前にイシハラさんがいるのだろうか。

「ところで、今日は、何でここに来ているの?」
「それはね..」

少しイシハラさんの頬が赤くなった気がした。
 
 (続く?)

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ