No.1119

題名:空想と没頭における臨界期仮説のがらくたの塊
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1116の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書の続きであるとしながらも、記述しながらも、最後にどこに辿りつくのか分からない。まったくもって、先に記述した報告書の内容をあまり覚えていない。書いた瞬間に忘れてしまう。それが、筆者の記憶の忘却の仕組みとも言えようか。しかしながら、報告書のNo.1117でも示されたように、多くの人にとって記憶の忘却は避けることができない現象でもありつつも、人によってはVHSテープのライブラリのような並外れた自伝的な記憶をもつ人も、世の中には存在することが知られている1)。それが、Highly Superior Autobiographical Memory( HSAM:非常に優れた自伝的記憶)と診断された人たちになる。
 アメリカの神経生物学者であるJames L. McGaugh博士ら2)は、2006年に初めてHSAM者の報告をした。それによれば、彼ら(彼女ら)は、与えられた暦日の出来事を、見事な正確さでもって詳細に思い出すことができるが、個人的には関係のない詳細なことを思い出すとなると、平均よりも良くないという自伝的な記憶が特に優れているとされる。最初の症例は、McGaugh博士らによる通称AJ(本名: Jill Priceさん)である。この報告をきっかけに、今では世界には60人のHSAM者がいることが確認されている。
 彼ら(彼女ら)の脳の構造の違いも報告されているが、その構造的な脳の違いはHSAMによる原因なのか、それとも、それ自体がHSAMを引き起こす活動の結果なのかはまだわかっていない3)。したがって、今後の研究の動向に興味のあるところではあるが、HSAMを持つ人には共通した特徴があることが発見されている。①日付で記憶を整理している、②強迫神経症的傾向、③自己を中心とした記憶、である4)。それに加え、空想傾向性で、没頭性であることも指摘され、没頭性によって物事を細部までこだわって記憶し、空想傾向性によって頭の中である出来事を繰り返し思い出すことも判明している4)。まるで、空想と没頭は、自らの特徴を表しているかのようでもあるが、冒頭でも示したように筆者は幸いなことに、すぐに忘れる。ゆえに、HSAMではないのであろう。
 そうして、ここで一つの空想をする。10カ国語が話せることによって、たぶん楽しいだろうな、ということが。ありがとうも、図に示すように世界には沢山ある。さらに、文献5)にはこう書いてある。「言語習得における臨界期仮説はがらくたの塊です」5)と。せめて一つは、こう学ぶ。ここでの記述ががらくたであったとしても、である。

図 世界のありがとう5)

Jak sie pani nazywa? คุณชื่ออะไรครับ  ¿Cómo se llama usted?  你叫什么名字?

1) https://www.psychologytoday.com/us/blog/quirks-memory/201301/people-extraordinary-autobiographical-memory (閲覧2019.3.26)
2) Parker ES, Cahill L, McGaugh JL: A case of unusual autobiographical remembering. Neurocase 12: 35-49, 2006.
3) LePorta, AKR., et al.: Behavioral and neuroanatomical investigation of Highly Superior Autobiographical Memory (HSAM). Neurobiology of Learning and Memory 98: 78-92, 2012.
4) https://tocana.jp/2017/02/post_12392_entry_2.html (閲覧2019.3.26)
5) http://www.bbc.com/future/story/20150528-how-to-learn-30-languages (閲覧2019.3.26)

 
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