No.1113

題名:完全変態と不完全変態
報告者:ダレナン

 ヒトは、生まれてから成長するまでに大きくはなるものの、所謂変態は遂げない。例えば、さなぎがチョウとなるような羽化や、おたまじゃくしがカエルになるような変態は明らかにない。これは、ヒトを代表として一般的に哺乳類の他、鳥類、爬虫類も、基本的な体の構成は変わらず、各部分の発達によってその比が変化する程度で、連続的に形態が変化することはない1)。
 ヒトの進化における特異性として、ネオテニー(幼形成熟)があげられる。骨格からしても、チンパンジーと比較してもヒトの大人は子どもをそのまま拡大したような形であり、脳屈曲(動物の胚が発育中に脳の原基である神経管の先端部が発育とともに前方にまたは後方に折れ曲ること3))に関しても、ヒトの場合は大人になっても保たれているという解剖学的な事実がある2)。また、そのネオテニー的な特徴は、精神面にも現れ、ヒトの好奇心・探究心は、大人になってからも知識欲、あるいは、学習欲として続き、そこから、想像力・創造性、あるいは、芸術や演芸にみる感受性がもたらされる。それが、ヒトらしさ、所謂ヒューマニズムと呼ぶものに繋がることも、文献3)において指摘されている。
 ただし、ヒトは、がらりと生まれ変わろうとしても、変態できないことから、違う形態には生まれ変わることができない。もちろん脱皮などの現象も持ち合わせていない。そのことから、ヒトは、大人(成体)になっても、変態には憧れる。むしろ、社会にもまれればもまれるほど、変態に憧れる。このような事態を察知してか、「およそ半分以上の人がド変態!!あなたは? 私の変態度」4)で、その度合いを診断してみたい気持ちに常に駆られることとなる。ここで、気づく。変態には大きく2つの意味がある。①「形や状態を変えること。また、その形や状態」、②「普通の状態と違うこと。異常な、または病的な状態」である5)。そして、①は、詳しくは、「動物で、幼生から成体になる過程で形態を変えること。おたまじゃくしがカエルに、蛹(さなぎ) がチョウになるなど」の意味となり、②は、「性的倒錯があって、性行動が普通とは変わっている状態。また、そのような傾向をもつ人」となる5)。ただし、英語では、前者は、metamorphosis、後者は、perversionとなることから、大いに異なる。なぜ、日本語では、両者とも変態なのか、と不思議に感じる。
 一方で、概して古い形質を保った昆虫の変態、例えば、ゴキブリ目などの昆虫は、完全変態でみられる明確な蛹(さなぎ)の時期が存在しないことから、不完全変態となる6)。あれほど憧れた変態でも、昆虫の中でも、不完全な変態がいるという現実、である。これに対して、先にも述べた、チョウやガのように翅のない幼虫から蛹(さなぎ)を経て翅のある成虫になるのが完全変態となる7)。
 あなたの変態は、完全か、不完全か。変態できなくとも、変態でないと言い切れる人はいない(であろう)。なぜなら、その”でない”の一部には、ヒトの持つ好奇心・探究心が関わっている。

1) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%89%E6%85%8B (閲覧2019.3.14)
2) https://www.blog.crn.or.jp/kodomogaku/m/pdf/24.pdf (閲覧2019.3.14)
3) https://kotobank.jp/word/%E8%84%B3%E5%B1%88%E6%9B%B2-111885 (閲覧2019.3.14)
4) https://www.arealme.com/my-psychopathy-check-quiz/ja/ (閲覧2019.3.14)
5) https://dictionary.goo.ne.jp/jn/200474/meaning/m0u/ (閲覧2019.3.14)
6) https://kotobank.jp/word/不完全変態-123816 (閲覧2019.3.14)
7) https://www.sci.hokudai.ac.jp/bio/keyword/%E5%A4%89%E6%85%8B/ (閲覧2019.3.14)

 
pdfをダウンロードする


...その他の研究報告書もどうぞ