No.1103

題名:アンモナイトの最後の晩餐について -K-Pg境界での出来事-
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1098の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書にてオウムガイから、アンモナイトへと考えをシフトし、それによる頭の中のアンモナイト化を防ぐことに成功したかはさておき、一時代(白亜紀)においてアンモナイト王国をも築いたはずのアンモナイト類は今や絶滅し、方や、同じような形態を有するオウムガイは生き残ったことを伝えた。そこで、ここでは、なぜアンモナイト類が絶滅に至ったのかの経緯について調べたい。
 文献1), 2)において、アンモナイト類が絶滅に至った謎が詳細に推測されている。中でも、文献2)は表題のように「アンモナイトの最後の晩餐 (The Last Supper of an Ammonite)」と名付けている。非常に面白い題名であることから、本報告書もこれにあやかりたい。
 アンモナイト類が最も栄えたのは、白亜紀になるが、この期は恐竜が大繁栄した時代でもある。そして、その白亜紀の末期には、地球の環境を変える大きな事件があったことがよく知られている。それが、巨大隕石の衝突である。そして、それが起こったと推定されている年代は、中生代白亜紀(独: Kreide)と新生代古第三紀(英: Paleogene)の境目にあたり、そのことから、その年代をK-Pg境界と呼んでいる3)。ここで、地球における生物多様性(属レベル)の推移を図に示すが、この右端の6550万年前の谷が、恐竜が絶滅したK-Pg境界になる。このK-Pg境界では、先に述べたように、メキシコのユカタン半島付近に直径約10kmの巨大隕石(チクシュルーブ衝突体)が落下した3)。それによって地球の気候が変化し、大量絶滅の引き金を起こした3)。その一つが酸性雨にあり、海洋に大量の酸性雨が降り注ぐことで結果として、海洋環境のpH

図 地球における生物多様性(属レベル)の推移3)

バランスが著しく変化したと推定されている2)。さらに、アンモナイト類の歯の検証から、アンモナイト類は、口の中に食物を閉じ込め、それを食道に運ぶ歯舌(*)の存在が確認されている。この摂食システムの解析から、アンモナイト類は水に浮かぶ小さな甲殻類やプランクトンなどの小さな食物が主食であったことが示唆されている2)。すなわち、その食性は、海洋環境のpHバランスの崩れでもって、アンモナイト類の主食の大いなる減少を招くとともに、アンモナイト類に最後の晩餐へと導いた可能性を示唆している2)。方や、オウムガイはアンモナイト類よりも海の深所へと居を移すことで、海洋環境の影響も少なく、かつ、食性もプランクトンに依存していなかった1)。この違いが、方や絶滅し、方や生き残った理由とされる。

*:動物の消化器の一部で,おもに食物のかみ切りや,かみ砕きをする硬い器官4)
1) https://blog.everythingdinosaur.co.uk/blog/_archives/2014/08/04/unravelling-an-ammonite-mystery.html (閲覧2019.3.3)
2) https://blog.everythingdinosaur.co.uk/blog/_archives/2011/01/07/4721727.html (閲覧2019.3.3)
3) https://ja.wikipedia.org/wiki/K-Pg境界 (閲覧2019.3.3)
4) https://kotobank.jp/word/Radula-1246014 (閲覧2019.3.3)

 
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