No.1015

題名:アイデンティファイを巡るクラインの壺からの神秘 Ⅱ
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1014の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書にてトポロジーの考えで重要となるアイデンティファイについて詳しく説明した。また、その一方で、人間は、内的にも、外的にも、トポロジーによって表現できることも示唆した。ここでは、それらの関連について考察したい。ただし、人体の外的なトポロジーに関する表現が好ましくないと思われる方もいるかもしれないので、そこは前もってお詫びしたい。筆者としては単に生物的な捉え方として述べたいつもりではある。さらに、人体のトポロジーの口腔部と肛門部によってトーラスの種数1を表現していることになるが、ここでは肛門部は扱わないことにする。
 報告書のNo.263でも示されたように、ヒトは神のいたずら(進化)によって、性別二形で雌雄異体へと至った。その概念は、近年では単純に二形とは言えない状況にまで文化的に発展したが、いずれにせよ、性別や性行為(交尾)にある神格化がもたらされたことによって、ヒトは明らかに他の動物とは異なる進化を遂げた。そして、神格化されたそれらの行為は、文化の発達とともに負の側面として隠されることになった。表立って性を表現することは、あらゆる国如何問わず、法律によって罰せられ、そこに動物との違いがはっきりと表れる。人のそれは、単に生物体として繁栄させることだけを意味だけではなく、大事な行為として文化的にも規定されている。これを逆の味方で言い換えると、性への衝動が文化のさまざまな側面の隠れた衝動となっている1)。それによって、ヒトの性的特徴の進化は、計画や設計図に基づいて起きているのではなく、ランダムな変異の混沌とした力と進化の組織的力との相互作用によって起きる1)。それゆえに、文化が進化し始める以前から、ヒトは、異性とうまく関係を持てるように後押ししてくれる本能や傾向を進化させ1)、それが文化的なDNA(ミーム)として刻まれている。
 そこで、動物とは異なる性的な行為の象徴として、キスが挙げられようか。その様子を図に示す。人体の外的なトポロジーで捉えなおすと、これは口腔部という開口された部位のアイデンティファイとなる。このアイデンティファイは人にしか見られない行為でもある。報告書のNo.1009に記述したように、このアイデンティファイ行為の前には、それ相応のコミュニケートがある。まず、“邂逅”(めぐり逢い)である。そして会話でもって、言語による意味的連続体が写像として両者間になされていれば、間違いなく内的なトポロジーが生じている。そして、外的なトポロジーも、先のアイデンティファイ行為でもって、新たなトポロジー(めぐり愛)をもった「私」に生まれ変われる。そのため、クラインの壺のように捻じれていても、内的、外的にトポロジーとしてアイデンティファイすることは、ヒトが人となったミームの起源なのかもしれない。ゆえに、文化的にもキスには特別な意味愛がある。

図 キスするカップル2)

1) ブロディ, R: ミーム 心を操るウイルス. 講談社. 1998.
2) https://unsplash.com/photos/ihvWWW-Sdtw (閲覧2018.12.14)

 
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