No.1775

題名:その感性には管制塔は応答しない。
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1774の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 父が目覚めたのは、会社の事業を大きく拡大させたのは、僕が生まれたからだったのかもしれない。僕を抱いて会社に戻ってからの父の手腕は、今でも伝説になっている。方や、僕が目覚めた10歳の春は、やっぱりこぶちゃんの存在しか思いつかない。父に連れられ、船室内にいたラクダは、その小さくてもその黄金色に輝いているこぶは、ひとこぶであっても、ふたこぶにみえるほど眩しかった。その時の体中からもほとばしるほどの毛並みも、はっきりと目に焼き付いている。同時に、僕という存在を認めた時のこぶちゃんの鳴き声、

こぶちゃん:「ンゴォォォォォォオオオオオオオオオーーッ!」

は、こぶちゃんと僕との出逢い、その後の人生を運命づけていたのだろう。その神秘なる啓示は、僕にCreaterとしての役割をも与えてくれた。

そのこぶちゃんが死んだのだった…。

月の土に埋め、その盛り上がっている個所を、旗があるその個所を、着陸船の中からずっと眺めていた。その旗の先には、青い色をした球体、地球がぷっかりと浮かんでいた。

僕:「管制塔、応答せよ。こぶちゃんが、流星にあたり、ンゴォォォォォォオオオオオオオオオーーッ!、ンゴォォォォォォオオオオオオオオオーーッ!と鳴いていた声が耳にこだましています。こぶちゃんの鳴き声が、耳にこだましているのです。管制塔、応答せよ。応答してください」

何度も交信を試みても、あたりは、いつまでもシーンとしたままだった。通信機のスピーカーからは何の音も漏れてはこなかった。その状態は、交信しても、地球からのメッセージが届かない状態ではない。やっぱり、これは時間的な遅延とは異なるようだった。

誰も、応答していない。応答しない、のだ。

Createなき後、その感性には管制塔は応答しない。

いまや、それが、はっきりと分かった。

Createなき後、その感性には誰も応答しない、のだ。

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ