No.985

題名:インターネットにおける画像の作者同定
報告者:アダム&ナッシュ

 インターネット上に多くあるコンテンツは、今や写真だけでなくイラストも含めて、多くの画像として存在している。そのコンテンツの中でも、特徴的な要素を持つ画像、少なくともその画像の元の作者の様々な作例を知っている場合は、誰による作品の画像であるかは、同定しやすいことが多い。しかしながら、画像はデジタル化に伴って容易にコピーしやすく、そこに著作権としての問題が絡む。すると、真の画像はたった1つのコンテンツであったとしても、そこには合法違法は問わず、様々な改変も起こる。すると、元の作者が誰であるのか、より一層混迷を増す。特に、イラストよりも個性が出にくい写真は、作者の名前が分からなければ、真の作者が判明のままのこともしばしばである。人物写真であれば、その写真に写るモデルさんの名前は分かっても、案外知らないのが作者の名前である。
 イラストに関しては、文献1)にあるように、教師あり学習をベースとした手法によって同定できる。まず、訓練となる画像の特徴量を抽出し、識別器を構成した後に、作者のランキング出力にて作者を同定する1)。それによって、最大で64%の1位正解率、88.5%の3位正解率となったことが示されている1)。このようにイラストに関しては特徴量が抽出しやすいかもしれない。しかしながら、特徴のない写真に関しては、目の肥えた人の能力による判別でも、相当に難しくなる。それは、イラストは作者の意図(脳内フィルタ)がその作風に反映しやすいが、カメラ自体は現実を切り取る行為であり、そこにカメラマンの思考が構図や被写体以外では反映しにくいことをも意味している。写真は、芸術手段でもあると同時に、報道手段でもある。そこで、より写真の芸術性を高めるならば、カメラマンの意図(脳内フィルタ)するように、後刻のレタッチが必要となる。ただし、現在のデジタル技術で、レタッチしすぎると、写真が写真ではなくなり、イラストや絵画のようになる。そうすると写真としての意味も見出しにくくなる。写真がただの素材となる。このことから、写真としての画像を活かすには、レタッチも必要最小限に抑えなければならない。この塩梅が技術的に非常に難しい。
 ただし、この塩梅をうまく抑え、表現として自分の写真を最大に活かすようなレタッチ技術も併せ持てば、その写真は、実は同定しやすくなる。そのような技術を持つカメラマンの一人に、ロシアのモスクワに在住のGeorgy Chernyadyev氏がいる。氏の作例を図(モデル:Olya Pushkinaさん)に示す。その他の氏の作例として、氏のHP3)にあるので、興味のある方は閲覧していただきたい(ただし、一部はアダルトコンテンツに分類されるので、そこは個人の判断にお任せしたい)。

図 Georgy Chernyadyev氏の作例2)

氏のレタッチ能力もYoutube4)で確認することができるが、なぜかレタッチ感も含めて独特の雰囲気をもつ氏の作品は、目の肥えた能力を持たない筆者らでも、多くのネット上の写真の中で明らかに同定しやすい。

1) 板持貴之, 他: イラストの作者同定アルゴリズムの提案. 情報処理学会第74回全国大会: 6Q-3, 2012.
2) https://alpha.wallhaven.cc/wallpaper/680731 (閲覧2018.11.30)
3) https://imwarrior.ru/ (閲覧2018.11.30)
4) https://www.youtube.com/watch?v=mlCgSQ9AOLU (閲覧2018.11.30)

 
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