No.962

題名:もーもーたろうのおはなし
報告者:ダレナン

 ある村に年老いたおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 おばあさんが川で洗濯をしていると、川上からドンブラコ、ドンブラコと牛が流れてきました。その牛はとても大きかったのですが、どうやら風船のようにお腹が膨らんでいたことから、そのお陰で川にプッカリと浮かんでいるようでした。

「おやおや、とても大きな牛だこと。一体どうしたんだい。」

おばあさんは牛に尋ねてみました。すると、その牛は、

「なにやら変な草を食べてしまったようなのです。あまりにも美味しい草だったので、ドンドンとその草を食べていると、気がつくとお腹が膨れ、歩けなくなってゴロゴロと川まで転がってしまったのです。…

…やばいことになった、と思いましたが、なぜか川の中に入った途端、川の中に沈むことなく、プッカリと浮いて、そのままここまで流れてきたのです。」

「おやおや、変わった話もあるものですね。なんとかするかね?」

「ぜひ助けてください。」

「わかりましたよ。それ、よっこらしょ、よっこらしょ。」

おばあさんは必至でその牛を川岸まで手繰り寄せようと、たずなを引っ張りました。でも牛はドンドンと川を下っていきます。どんなにおばあさんが頑張っても、その牛は川岸に近づくことなく、川下に流れていきます。

「もーもー」

牛は困って鳴き叫びました。すると、どうでしょう。鳴けば鳴くほど、その牛のお腹が大きく膨らみはじめ、ついに川から出たかと思うと、今度は宙に舞い上がりました。そうです。今度は、ドンドンとその牛が空に浮かび上がっていくではありませんか。その様子を見て、おばあさんは若くして天に召された息子のたろうのことを思い出さずには居られませんでした。

「もーもーたろうや。おばあちゃんのところに、還ってきておくれ。」
 (続く?)

 
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