題名:豚の哲学、あるいは哲学する豚について
報告者:ナンカイン
世の中には面白い考えが沢山ある。ふとした拍子にそれを発見すると、”ブヒィ”、と嘶きたくなる。それが、豚の哲学へと至る。
そもそも豚の哲学なるものは、慶應義塾大学の倫理学を専門とする成田和信博士による文献1)の表題にもあるように、哲学や倫理学で一般的な用語とされる。そこで、それを詳しく調べると、イギリスの哲学者で、政治哲学においては多大な影響を与えたジョン・スチュアート・ミル氏による言葉「満足な豚であるより、不満足な人間である方が良い。同じく、満足な愚者であるより、不満足なソクラテスである方が良い。そして、その豚もしくは愚者の意見がこれと違えば、それはその者が自分の主張しか出来ないからである。」2)に起源があった。その言葉の意は、「ただ食事にありつき、食欲を満たし続けるといったただ生きるだけの生き方は人間の生き方としては不十分であり、人間が人間である以上、ただ生きること以上に、善美なるものについての知を探究し、自らが正義に基づいて正しく生きようとする善く生きることを求め続ける生き方がより価値のある生き方として求められている」という質的快楽主義の例えとされている3)。そこで、豚さんに問うてみる。
あなた(豚さん)は、ただ食事にありつき、食欲を満たし続けるだけの存在なのか?
と。すると、豚さんはこう答える。
“ブヒィ”
なるほど。そういうことであるのかと、と分かる。そして、再び、
あなた(豚さん)は、トンカツの材料として満足な存在なのか?
と、次に問うてみる。すると、豚さんはこの質問にはこう答える。
“ブヒ”
なるほど。もしかして、そうであり、そうではないのかもしれない。そこで再び、
あなた(豚さん)は、豚の生姜焼きの材料として満足な存在なのか?
と問う。これには、”ブヒブヒィ”と答えた。そう、豚さんは哲学する豚なのである。
1) 成田和信: 快楽主義の新たな試みと人生満足説 : 「豚の哲学」批判をめぐって. 倫理学年報 61: 16-25, 2012.
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・スチュアート・ミル (閲覧2018.11.6)
3) https://information-station.xyz/5329.html (閲覧2018.11.6)