題名:持続的ベースラインが音楽の主観的な心象に与える影響
報告者:ゴンベ
本報告書は、基本的にNo.934の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
先の報告書にて音楽における重低音について考え、特にベースの持つ効果について検討した。ここでは、ベースラインの中でも持続性に特徴のある音楽を2曲取り上げ、それらの曲から持続的なベースラインが音楽の主観的な心象にどのような影響を与えるのかについて検討したい。
音楽を電気信号から空気の音波へと変換する機器は、スピーカーとなるが、家庭内にある比較的大きなスピーカーや、車内のスピーカー、あるいはヘッドホンいずれに関わらず、原理はほぼ同じである。筒状に電線を巻いたボイスコイルの周りの磁石にて磁界を与えつつ、ボイスコイルの電線に電流を流すことでその電流に応じた電磁力が生じ、それに伴って電磁誘導の法則でボイスコイルの先にある振動板が振動、その力が空気に伝わることで音波となる1)。ゆっくりとした大きな振動であれば低音となり、細かな振動であれば高音となる。一つのスピーカーで高音から低音までを充実させることが難しい場合は、大きな振動板のスピーカー(ウーハー)が低音を担い、小さな振動板のスピーカー(ツイーター)が高音を担うこともあり、スピーカーが2つ、ないし、3つで構成されている場合は、音の周波数でスピーカーの種類の使い分けがなされている。
ベースラインは、主に低音から重低音を担うために、スピーカーでは大きな振動でもって音波を発生することとなる。すると、低音や重低音は、大きな振動でもって身体への影響も及ぼしやすい。これは体感音響への振動となりやすいことから、それを利用してボディソニックなるシステム2)も以前から考案されている。これによって音楽の持つ振動を活用し、脳の内側の古皮質や旧皮質に刺激を与え、意識下の世界にも影響を及ぼし、より情緒的、官能的な面に作用し、人間の根源的なものに訴えかけることができる2)。筆者は比較的、持続的なベースラインを持つ音楽に惹かれることが多いが、それは上記ゆえの理由からかもしれない。ロックバンドにおいても、低音部においてリズムとハーモニーの両方を支えることから、べ-スは重要なパートであることも指摘され、分析されている3)。
そこで、持続的ベースラインのある2曲を提示すると、①Azaleh Moonlight、②Phelian Lostなどが挙げられる。その両曲の音レベルの波形を図に示す。図の波形の盛り上がり箇所でともに持続的ベ
図 曲の波形4)から作図
ースラインを聴くことができるので、文献4)を参考にして聞いていただきたい。ここで紙面が少なくなったことから、詳しい主観的な心象は示せず残念ではあるが、両曲とも情緒的、官能的な面に効くという感じである。
1) http://www.power-academy.jp/electronics/familiar/fam01900.html (閲覧2018.10.12)
2) 小松明: 体体感音響振動の効果メカニズム試論: ボディソニックによる音楽療法の効果はなぜおこるのか. 日本バイオミュージック学会誌 7:28-36, 1992. (http://www2.gol.com/users/somestic/mechanism.htm (閲覧2018.10.12))
3) 松浦佳輝, 他: パターン認識を用いた特定のベーシストの特徴の分析. 情報処理学会第79回全国大会 3L-1, 2017.
4) https://soundcloud.com/immnnt/1-azaleh-moonlight https://soundcloud.com/anastasia_yudenkova/phelian-lost(閲覧2018.10.12)