No.866

題名:広告的な図に基づく反応のしやすさの実験
報告者:ナンカイン

 本報告書は、基本的にNo.865の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 以前、筆者の報告書のNo.319において、ヒトは人にしか興味がないことを、人の進化の過程から探った。それと同様に、先の報告書で示したように、バウハウスによる広告記憶の実験において、最も記憶に残ったのが人間の顔写真(60.0%)であり、その次に文字(26.3%)であった。この結果からも明らかであるが、広告でも人の記憶に残りやすい要素は、人であり、中でも顔は最も印象深い要素となるのかもしれない。
 保険広告に関しては、そのパフォーマンスを向上させる方法について、いくつかのポイントが得られている。文献1)によると、①アニメーションはコンバージョン率(*)向上に寄与せず、②青か赤が背景色の広告は最も効果が高く、③人の顔はコンバージョン率を向上させ、④「今すぐお申込みを」がCTA(**)に効果的であり、⑤価格情報はあってもなくても同じ、とのことである。中でも特に、③は先の広告記憶の実験と同じく、人の顔の広告としての重要性を示し、人や人の顔を使った広告は、それらを含まない広告よりも177%高いコンバージョン率をもたらした結果2)からも分かるように、人は人によって反応しやすいことが明らかである。
 一方、顔への見方の違いには、文化的な要素も大きい。文献4), 5)によると、西洋文化で育った人は、画像を見る時、中心に置かれた題材をその周囲のものと切り離して捉える。しかしながら、東アジアの人は同じ画像を全体的に見る。このことから、顔からの情報を抽出するために採用される戦略は、文化によって異なることも示唆されている。ただし、視線を社会信号として使用する際においては、顔の知覚に関する文化的な差異以前の知見の根底にあると推測されており6)、人の顔、かつ、注視(視線がこちらを向いている)した画像は、文化的な要素に関わらず、人が人として、もっとも反応しやすい(あるいは、記憶として印象に残る)ことも予想される。

図 考案した広告的な図写真は文献7)より

 そこで、このような反応しやすい広告的な図を考案すると、図のようになるのかもしれない。写真はドイツの写真家のkubagrafie氏、モデルはSelina Blossさんになるが、このような人の顔で、かつ、注視した魅力的な写真にうまく装飾を施すと、やはり広告的に考えても反応しやすいことが示唆された。

*: サイトを訪問した人が、商品を購入したり、資料請求したりする率のこと2)。  **: Call to actionの略。ユーザーに行動を起こしてもらうために誘導すること3)。
1) https://markezine.jp/article/detail/20747 (閲覧2018.7.19)
2) https://webtan.impress.co.jp/g/コンバージョン (閲覧2018.7.19)
3) https://ferret-plus.com/8430 (閲覧2018.7.19)
4) https://wired.jp/2008/08/28/「西洋人は目を見、東洋人は鼻を見る」:顔の認/ (閲覧2018.7.19)
5) Blais C, Jack RE, Scheepers C, Fiset D, Caldara R (2008) Culture Shapes How We Look at Faces. PLoS ONE 3(8): e3022. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0003022.
6) Gobel MS, Chen A, Richardson DC: How different cultures look at faces depends on the interpersonal context. Can J Exp Psychol 71: 258-264, 2017.
7) http://hotsta.net/media/1799877796785596455_3563790101

 
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