題名:人工知能によるだれそれ小説執筆への違和感
報告者:ダレナン
推論や判断といった処理においては、古くから人工知能(AI)は得意とする領域である。ただし、新たにものを生み出すというような創造といった領域に関しては、人間の方が得意とされ、長らくAIには不可能とされた領域でもある。しかしながら、近年のAIの技術は、創造にまで及ぶようになり、独自の画像の生成や文章の生成もできるようにまで進化した。AIによる小説執筆では、日本では公立はこだて未来大学の松原仁博士を中心に小説家の星新一氏の短編小説を分析、そして、氏のエッセイなどに書かれたアイデア発想法を参考にして星新一氏に類するような短編小説を創作させることを試みているのは、よく知るところではある1)。また、名古屋大学の佐藤理史博士や松崎拓也博士らのグループも、AIによって星新一氏風の短編小説の執筆を試み、その方法が解説されている2)。それらの成果物としてAIによる短編小説が読売新聞にも掲載されたことがあり、それが文献3)にも掲載されているが、その小説への意見としてある一定のクオリティがすでに得られていることはその小説を読めば誰しもが分かるであろう。さらに、近年ではアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)のグループによってAIによるホラー小説の執筆が試みられている。その名はShelleyという4)。Shelleyは、フランケンシュタインを執筆したイギリスの小説家であるMary Selleyに由来するが、このAIのShelleyは、正確には人間(Human)とのコラボレーションによって執筆される4)。その方法として、Twitterアカウント(@shelley_ai)で1時間ごとに開始するストーリーに応えるだけで、初めてのAI-Humanホラーアンソロジーをあなたと一緒に書けるとのコンセプトである4)。その内容に関しては文献5)にもあるように、本当にホラー小説のような内容であることが指摘され、AIによる小説執筆の進化のほどが伺われる。
このようにして創造性の問われる小説でも一定のクオリティが確保されたことから、事実内容としての執筆であるニュース記事などは、すでにAIによって部分的に記述されていることも多いかもしれない。ニュース記事などの記述方式は、おおまかには定型的であることから、その定型はAIにとっては得意な領域でもある。しかしながら、ニュース記事がAIによって記述されているニュースそのものは、ニュースとして面白みに欠けるために、”この記事の一部はAIによって書かれています”、と明言されていないことも多いに違いない。昨日は人間によって書かれた記事も、ある時以降は部分的に、あるいは、全面的にAIによって書かれていたとしても、読む側はさほど違和感なく読めるのであれば、AIによる文章化は成功したともいえよう。そう、この報告書に記述した文章が、仮にAIの手によると告白しても、違和感(イワカン)がないこととなる。ただし、図の夕日を見つめるイワにイワカン
図 夕日を見つめるイワ6)
を感じたとしたら、この報告書はAIの仕業ではない。人間的なイワカンがあるからである。
1) https://www.fun.ac.jp/~kimagure_ai/index.html (閲覧2018.5.20)
2) http://bunshun.jp/articles/-/2326 (閲覧2018.5.20)
3) https://virates.com/society/53176262 (閲覧2018.5.20)
4) http://shelley.ai/ (閲覧2018.5.20)
5) https://gigazine.net/news/20171101-ai-shelley-writes-horror-stories/ (閲覧2018.5.20)
6) https://www.nagasaki-tabinet.com/guide/51564/ (閲覧2018.5.20)