No.714

題名:ダンスにおけるDNA二重らせんへの投影
報告者:ナンカイン

 本報告書は、基本的にNo.670の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 報告書のNo.670にてミハイロフスキーバレエ団(旧レニングラード国立バレエ団)のプリンシパルであるIrina Perren氏とMarat Shemiunov氏による身体運動の表現について、私的に論じた。そこから、バレエをダンスの一つとして位置づけると、その変法として、ポール(棒)を使ったダンス(ポールダンス)などがあり、近年ではアーチストもポールダンスを取り入れることが多くなったことから、現在ではその市民権を得て、ダイエットやエクササイズとしても、一般にポールダンスが行われるようになった1)。その一方、ポールだけでなく、ストラップ(紐)を利用したダンスもある。それをストラップダンスとも正式に呼ぶのかは分からなかったものの、バレエやポールダンスとは異なった魅力を有するのが、そのストラップダンスである。理由として、バレエは個人の身体能力のみが求められ、舞台の大きさと重力によって展開するダンスであるのに対して、ポールダンスは固定されたポールを中心としてそこが舞台となり、場合によってはバレエの高さを越える展開も可能となる。それ以上に、ストラップはポールのように固定されていないために、ポールよりも舞台が流動的になり、かつ、バレエよりも重力による影響を部分的に除去でき、非常に複雑な動きが可能となるからであろう。その例として、Tarek Rammo氏とKami-Lynne Bruin氏によるストラップダンスを図示する。図を見て分かるように2本のストラップを使い、かつ、Tarek Rammo氏とKami-Lynne Bruin氏が互いに連携を取りながらダンスを織りなす様は、まるでDNA二重らせんをイメージせずにはいられない。Vimeo3)に彼らのダンスが見ることができるので、興味のある方は見て頂きたいが、彼らの表現力には感嘆せずにはいられない。

図 Tarek Rammo氏とKami-Lynne Bruin氏2)

 DNAの二重らせんは、ジェームズ・ワトソン博士とフランシス・クリック博士によって1953年に提唱され、その背景には、実は女性の研究者であるロザリンド・フランクリン博士の貢献も大きく、その逸話は文献4)にあるも、今では当たり前のDNAの構造でもある。二重となった理由は、DNAの複製における転写する際の不安定と、転写後の安定とをうまく調和させたことにあるが5)、この不安定さと安定さもTarek Rammo氏とKami-Lynne Bruin氏のストラップダンスから見ることができ、まさに、両者の連携から何かが産み出されんとする様子は、ダンス界における新たな息吹を感じる。二重構造の発見前において、エルヴィン・シュレーディンガー博士は、著書「生命とは何か」において、遺伝子に対して、「非周期性の固体」と述べたが、彼らのストラップダンスは、マクロレベルでの「非周期性のダンサー」の最たるものかもしれない。

1) https://matome.naver.jp/odai/2144457147985269001 (閲覧2018.1.25)
2) http://www.tkcircus.com/about (閲覧2018.1.25)
3) https://vimeo.com/178635197 (閲覧2018.1.25)
4) https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/31/sc31-3.pdf (閲覧2018.1.25)
5) https://oshiete.goo.ne.jp/qa/5648754.html (閲覧2018.1.25)

 
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