No.628

題名:ハクソロルールズ・オベランの生涯
報告者:ダレナン

 かつてイギリスのとある小さな町に、ハクソロルールズ・オベランが住んでいた。ハクソロルールズの本業は漁師であったが、生来の魚嫌いから、ニセ漁師として町の人にたぶらかされていた。

「お前は、とてもいい漁師だなぁー。魚が嫌いだけれども…。」

いつも町の人からそう言われるたびに、心が傷つくも、魚はどうしても好きになれない。

「なぜ、俺は、漁師なのに魚が嫌いなのか…。」

 そんなある日、仕方なく漁に出かけたハクソロルールズは今までに見たことがない、奇妙な魚を釣り上げた。くりくりした目に、何かこちらに訴えているようにも見えるその魚は、外観だけでなく、その全体の形も今までに見たことがない魚であった。いつもなら売っても金にはならないような魚は再び海に返すことが多かったハクソロルールズであったが、この魚の何かを訴える様子は、彼にとっては不思議と魅了され、放流することがどうしてもできなかった。そこで、仕方なく船のいけすに、金になる他の魚と一緒に放り込み、港に帰った。
 港に帰ると、町一番の長老がいつものようにそこにいた。長老は町の漁師が採ってきた魚を値踏みし、価格を操作する役目であったが、ハクソロルールズが釣ってきた魚を見ると、驚いた表情を見せた。

「ハクソロルールズ。その…魚は、いったいどこで…。」

目を丸くしながら、長老がつぶやいた。

「いや、なに、あんまりにも奇妙な魚だったので、捨てるに捨てられず、持ち帰ってしまった…。」

そのあと長老は何も言わなかったが、長老は仕事もせずにずっとハクソロルールズが釣ってきた魚をずっと見つめていた。
 その後、家に帰って家のいけすにその魚を放つと、釣った時と同じような感じで口をパクパクしていた。しかし、今度はそれがただのパクパクではなく、何かを訴えていることがハクソロールールズにも瞬時に理解できた。そして、彼はその魚からある海の位置が読み取れた。そして、次の日、その魚が訴えている場所で漁をしてみた。すると、いつもになく大漁の魚が採れた。それからというもの、ハクソロールールズはその魚からの訴えの読み取りに合わせて漁をすると、毎回、大漁となることに気が付いた。

「そうだ、あの魚はきっと他の魚の居場所を知っているに違いない。」

ハクソロルールズは漁に出るたびに大漁の魚を仕留めたため、いつしか大金持ちとなっていた。
 (続く?)

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ