No.544

題名:視線の背後にある意味
報告者:アダム&ナッシュ

 本報告書は、基本的にNo.543の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書にて運命的な意識的な意識について考え、そのきっかけは自己内に意識化された記憶に基づいて相手からの注視によって起こり得る可能性を報告した。ここでは、注視だけではなく、視線そのものが持つ意味を捉え、その視線から人の心理状態を探ってみたい。
 視線の元になる眼球の動きについては、報告書のNo.160でも報告されているが、筋肉の付き方から特徴的な動きがある。そのため、眼球が動かせる方向は限られていることが知られている。詳しくはNo.160を参照していただきたいが、その眼球の筋肉は図1に示されているように付着し、動きを司る筋肉として、上直筋、下直筋、内直筋、外直筋、上斜筋、下斜筋の6種類存在する。その働きは文献1)に詳しくあるが、一方で眼球を動かす神経は、動眼神経、外転神経、滑車神経に由来し、そのいずれもが中脳、橋などの脳の中枢部から延びている。その中脳、橋は大脳よりも古い系統に属する脳の部位であり、そのような理由から、眼球も意図して動かすことが難しい。右目が左、左目が右と自由自在に方向を操れるわけではない。そのため、無意識的な意識も眼球の動きに反映されやすい。例え

図1 眼球の筋肉と神経1)

ば、眼球の動きから、視線の様子、さらに心理状態を探ると、図2のように推測されている。右上に向くと脳の視覚チャンネルを使って何かを覚えているサインとなり、左上に向くと脳の視覚的構築チャンネルを使って何かを想像しているサインとなる。このことから、記憶を必要とする質問の時に、この向きを向くと嘘つきともなりうる3)。右に向くと脳内の聴覚チャンネルを使って音を覚えているサインとなり、左を向くと脳の聴覚構築チャンネルを使って音を想像しているサインとなる3)。さらに、右下を向くと味覚、匂いなどの感情的な記憶を使った感覚を覚えているサインとなり、左下を向くと脳内で自分と対話しているサインとなる。しかしながら、これは自分が馬鹿となっている時にもこの方向に向くとされるために注意が必要となる3)。このようにして、視線の動きは視線の背後にある意味に直結しやすく、目は心の窓であるとされる理由はここにある3)。ちなみに、チンパン

図2 目の方向と心理状態2)

ジーの場合はヒトほど目を見続けない3)。それだけ、人の視線には意味があるということにもなろうか。

1) http://what-when-how.com/neuroscience/the-cranial-nerves-organization-of-the-central-nervous-system-part-4/ (閲覧2017.7.27)
2) https://lonerwolf.com/body-language-eyes/ (閲覧2017.7.27)
3) 狩野文浩: 目は心の窓 –アイ・トラッキングで解き明かす類人猿の見た世界. 霊長類研究 28: 95-108, 2012.

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ