No.470

題名:錫器製造の茶壺について
報告者:ちょろりん

 世の中に様々なコピー品があり、それによってブランドの価値が一気に下がることもしばしばである。特にバックなどは、近年は有名なブランドのコピー品も多く、それを鑑定するには、ブランドに対する優れた眼識が必要となる。同じように、用途が同じでも本物のブランド品たる名品を使う(使える)ことは、コピー品にはない血統感がそこに備わっているために、逆に使う人の価値をも一気に上げることができる。この用途を茶器に限定すれば、千利休からの流れもあっていわゆる名品と呼ばれるものが少なくはなく、これを使う(使える)ことは、相当のステータスとなる。ちなみに、茶壺にこだわると、天下三肩衝のひとつでもある唐物肩衝茶入の新田や初花などは、戦国時代において織田信長、豊臣秀吉に仕え、千利休を師とする戦国武将の古田織部を主人公として描いた歴史漫画「へうげもの」にも出てくる有名な品であり1)、これを使える人は日本広しといえども、一部の人のみに限られる。これほどの名品ともなると、そのほとんどが国の重要文化財にも指定されているからである2)。そこで、一般的には、国指定のような名品でなくとも、何らかの名品でもって自らの品格を上げたいと思うのはやぶさかではないであろう。
 こと茶壺に関しては、優れた逸品がある。それが、錫器製造の茶壺である。それを図に示す。経済産業大臣指定も受けている伝統工芸品の製造を手掛ける大阪浪速錫器4)による茶壺であるが、この輝きにはなんともいえない趣がある。その大阪浪速錫器は、錫器の製作を専業とするが、江戸時代後期に京都から大阪に普及した京錫の流れをくむ初代伊兵衛(錫伊)によって代々大阪で隆盛を極め、昭和24年に今井弥一郎氏によって会社が設立され、現在は現代の名工の一人で伝統工芸士である今井達昌氏を代表とする会社である5)。製作方法も、むろん昔ながらのひとつひとつ熟練の職人による丹念な手作りを祖とする。古美術鑑定家の中島誠之助氏曰く、「いや~、いい仕事してますね。」となる逸品であろうか。この茶壺はその原料が錫であるために、金属特有の非常に密閉性が高い利点があり、お茶の風味を保つのに一役買っている。茶壺のふたも、外ふた、中ふたともに、開ける時も閉める時もまっすぐに

図 錫器製造の茶壺3)

行うことが常であり、それによってゆっくりと合わせ目まで空気を追いだすこととなる3)。実にすばらしいギミックである。なお、これに合わせた素晴らしい玉露とのセット(手摘み玉露・錫製茶壺セット)は、これを使う人は、もはや一流の証でもありゅのだじょーなぁ(一流に憧れるちょろりんがここに記す)。

1) https://ja.wikipedia.org/wiki/へうげもの (閲覧2017.5.1)
2) http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2013/0217/ (閲覧2017.5.1)
3) http://item.rakuten.co.jp/morihan/5183001/ (閲覧2017.5.1)
4) http://www.osakasuzuki.co.jp/ (閲覧2017.5.1)
5) http://www.osakasuzuki.co.jp/enkaku.html (閲覧2017.5.1)

 
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