題名:ポリアの壺問題における第三番目の壺
報告者:エゲンスキー
世の中にイノベーションを起こすことは非常に難しい。それは、その元となる事象が世間ではまだ確定していないことも要因としてありうる。すなわち、何がイノベーションとなるのか、あるいは、何がイノベーションとなったのかが、ある程度の未来にならないと判定できないからでもある。そのような事象に対して、先頃イノベーションを起こすプロセスが解明された1)。ローマ・ラ・サピエンツァ大学のVittorio Loreto博士らによれば、イノベーションは、現象論全体の深い洞察を得るための出発点となる顕著な規則性があり、それは統計的に発生されていることが示された2)。そして、ポリアの壺と言われる確率問題のひとつに、新奇性となるトリガーを導入することで、その現象を数理的に解明することができる、と証明した2)。ここで、気になるのが、ポリアの壺とはなんぞや、あるいは、トリガーとはなんぞや、ということに他ならない。数学的なポリアの壺問題としては、
壺に赤玉が a個、白玉が b 個入っている。その中から玉を1つ無作為に取り出し、選んだ玉を壺に戻した上で選んだ玉と同じ色の玉を1つ壺に加える。この試行を n 回繰り返すと、n 回目に赤玉が選ばれる確率を求めよ。
である3)。その詳細は文献3), 4)にあるが、答えは、a/(a+b)となり、nに依存しない。ここに第一の壺がある。ちなみにポリアとは、文献5)にあるハンガリーの数学者の名で、Pólya György博士に由来する6)。トリガーに関しては、Loreto博士らによれば、同じ色の玉を壺に加えるのではなく、取り出されたボールの色を基準に新しい色の玉を、複数個を追加する、というものである1), 2)。これがトリガー(きっかけ)となって事象を引き起こす異質な性質を、より深く理解できる。これが、イノベーションを知る新たな、第二の壺となる。そして、第三番目の壺はなんぞや、となるのであるが、György博士はハンガリー出身であることから、ハンガリーの壺がどのような形状だったかを知ることで、ポリアの壺への理解も深まろう。そこで、Googleにて検索すると、それらしき壺が発見できた。それが図のハンガリーの切手にある壺である。たぶん、Pólya György博士はこのような壺を問題の際に想定していたに違いない。
図 ハンガリーの切手にある壺7)
1) http://wired.jp/2017/01/29/polyas-urn-problem/ (閲覧2017.2.7)
2) Loreto, V., et al.: Dynamics on expanding spaces: modeling the emergence of novelties. arXiv:1701.00994. 2017.
3) http://mathtrain.jp/polya (閲覧2017.2.7)
4) http://kinokkory.hatenablog.com/entry/2014/12/08/183943 (閲覧2017.2.7)
5) Eggenberger, F., Pólya, G.: Über die Statistik verketteter Vorgänge. Zeitschrift für Angewandte Mathematik und Mechanik. 1923.
6) https://ja.wikipedia.org/wiki/ポーヤ・ジェルジ (閲覧2017.2.7)
7) http://www.alamy.com/stock-photo-postage-stamp-from-hungary-depicting-an-urn-from-hodmezovasarhely-72923556.html (閲覧2017.2.7)