No.2968

題名:今日のストーリーは、「非現実的お嬢様 Part4」
報告者:ダレナン

(No.2967の続き)
階段は果てしなく長く、まるで地下深く、地の底へと続いているようだった。
壁は石造りで冷たく、どこか湿っていた。かつては使用人たちの通路だったのか、それとも……?

数段ごとに「ミシ、ミシ」と不気味な軋みが響く。
懐中電灯の光が頼りない円を描きながら進んでいくと、やがて目の前に朽ちた鉄格子の扉が現れた。

扉の向こうから、風が吹いてきた。だがそれは外の風ではない。
花の香り、けれどそれは死んだ花の香り──枯れて、朽ちて、なおも甘く香る奇妙な香りだった。

重い扉を押し開けると、そこには一つの部屋があった。

中央に、小さな白い棺がある。

その周囲には、黒い花が咲き乱れていた。見たこともない、闇を吸い込むような花々。
そして──その棺の上に、鏡があった。

僕が近づくと、鏡の中に少女が立っていた。
まるで、そこだけ時間が止まっているかのように、少女はピアノ室の「お嬢様」と瓜二つの姿で、ただ僕を見つめていた。

鏡の中の少女が、口を開く。

「あなたが、来てくれたの?」

声は震えていた。
けれど、それは確かに──ピアノ室で聞いた“助けて”の声だった。

「私は……お姉さまの“影”。
いらない子。名も、誕生日も与えられず……
ここでずっと、お姉さまの音楽だけを聴いて、生きて、そして──死んだの」

その言葉と共に、部屋全体が震えた。壁に刻まれた古い呪文のような文字が、一斉に浮かび上がる。

 
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