No.2890

題名:今日のお題は、「0.1秒で恋に落ちた」
報告者:ダレナン

(No.2889の続き)
 大学二年の春、人が多く行きかうキャンパスで、僕は偶然、君を見かけた。

 その瞬間、僕の体に電流が走ったような感覚があった。

 長い髪が春風にそよぎ、柔らかな陽光が君の横顔を照らしていた。澄んだ瞳、整った鼻筋、ほんのりと桜色を帯びた唇――すべてが完璧だった。

 一目惚れなんて、漫画や小説の世界の話だと思っていた。でも、これは間違いなくそれだった。僕はその場に立ち尽くし、君の姿を目で追った。

 君は図書館へと向かっていた。分厚い本を抱え、ゆっくりと歩く姿はどこか儚げで、僕の胸を締めつけた。

 ――声をかけるべきか?

 でも、どうやって?

 僕はただの学生Aに過ぎない。何の接点もない彼女に話しかける理由が見つからない。

 それでも、気づけば僕は君の後を追っていた。

 図書館の扉を開けると、静寂の空気が包み込む。君は窓際の席に座り、ゆっくりと本を開いた。僕は少し離れた席に座り、ページをめくるふりをしながら、ちらりちらりと視線を送った。

 すると、ふと君が顔を上げた。

 目が合った。

 心臓が跳ね上がる。

 君は一瞬驚いたように見えたが、すぐにふわりと微笑んだ。

 その笑顔に、僕は完全に恋に落ちた。その時間は0.1秒だった。

今日のお題は、「0.1秒で恋に落ちた」

 
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