題名:今日のお題は、「シーサイド・メモリー」
報告者:ダレナン
(No.2860の続き)
あの日、僕たちは車で海辺へ向かった。舗装されていない細い道を抜けると、目の前には広がる青い海と、風にたなびく砂浜があった。潮の香りが車内に入り込み、彼女は窓を開けて深く息を吸い込んだ。
「すごいね、こんな場所があるなんて。」
僕は静かに微笑みながら、車をゆっくりと砂浜へと乗り入れた。タイヤが柔らかい砂を踏みしめ、ゆるやかにわだちを刻んでいく。彼女は助手席から身を乗り出し、目を輝かせながらカメラを構えた。
「撮ってもいい?」
「もちろん。」
僕はカメラを受け取り、彼女の姿をフレームに収めた。風になびく髪、薄ベージュのワンピース、砂に沈む裸足。シャッターを切るたびに、彼女の笑顔が記録されていく。
彼女がこちらを見つめる。レンズ越しの視線は、どこか遠くの未来を見ているようだった。僕はその瞬間を切り取る。きっとこの表情は、今このときだけのものなのだと思った。
「ねえ、これからもこうして写真を撮ってくれる?」
彼女のその言葉に、僕は軽く頷いた。未来はこの砂浜に刻まれたわだちのように、ずっと続いていくと信じていた。
けれど、ふと胸の奥に不安がよぎる。海の波は静かに押し寄せ、やがて砂の足跡をさらっていく。その様子が、まるで僕たちの時間を示唆しているようで、思わず彼女の手を強く握った。彼女は驚いたように僕を見つめたが、やがて微笑み、握り返してくれた。
その温もりを、永遠に覚えていたかった。
もし人生が二度あったなら。もしもう一度、君と出会えたなら。
あの海辺で、君は僕を選んでくれるだろうか。