No.2850

題名:今日のお題は、「彼女の凛とした姿」
報告者:ダレナン

(No.2849の続き)
 彼女に絵のモデルを頼むと、すんなりとOKしてくれた。「で、服装は?場所は?」と即答する彼女に、僕は少し慌てながら、場所はここ、自分のアトリエと大学の一角を提案した。「OK、で、いつがいい?」とあっけらかんとした口調で聞かれ、「明日の4時頃にお願いできるかな?」と伝えると、彼女は「わかったよ」と満面の笑みを浮かべた。

 そして迎えた当日。彼女は約束通り現れた。恥ずかしながら僕の方は少しドキドキしてしまったが、彼女はモデルとしての役割をしっかりとこなしていた。堂々としていて、凛としていて、その姿勢に僕は思わず息をのんだ。

 彼女の姿を目の前にして、僕は改めて気を引き締めた。僕は絵描きだ。ただの憧れや感傷ではなく、真正面から彼女と向き合って、筆を取らなければならない。

 しかし、描く前にどうしても「記憶」ではなく「記録」として残しておきたかった。「絵を描く前に写真を撮ってもいいかな?」と尋ねると、「全然いいよ」と彼女は軽くうなずいた。シャッターを切ると、画面には、どこか神秘的な空気をまとった彼女の姿が映し出されていた。

 そして筆を握り、キャンバスに向かった。彼女の姿を一心不乱に描き続けた。時が経つのも忘れ、ただひたすらに。

 数日後、僕は彼女に完成した絵を見せた。彼女はじっと見つめていた。そして、その後でふっと笑い、「絵もいいけど、写真のほうが好きかも」と言った。

 その言葉に少しだけ複雑な気持ちになったが、彼女が写真を褒めてくれたこともまた、僕にとっては嬉しいことだった。絵を描くことで彼女を見つめ、写真を撮ることで彼女を残す。どちらも僕にとって、大切な行為だった。

 今でも、あの日の彼女の凛とした姿を思い出す。

今日のお題は、「彼女の凛とした姿」

 
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