題名:今日のお題は、「振り向かない夜に」
報告者:ダレナン
(No.2848の続き)
黄昏が街を包み込み、車のヘッドライトが静かに点る時間。僕は君を送り届け、いつものように車を降りた君の姿を見送る。君は振り向き、何か言いたそうにしていた。だけど、僕はそれに気づかないふりをした。
「またね。」
そう言って僕は車に乗り込む。そして、君が家の扉へと向かうのを確認しながら、別れのサインを送った。ブレーキランプを5回点滅させる。それが僕たちの「愛してる」の合図。
そういえば、そんな歌があったな。懐かしい。だけど、僕たちには特別な意味があった。
君がドアを開けるその瞬間、何かを言いたげな顔が、ルームミラー越しに映った。君の笑顔の奥に潜む、ほんの少しの不安。僕はそれを無視してしまった。なぜだろう。何かを聞けば、何かが変わっていたのだろうか。
君の視点からすれば、どうだったのだろう。ブレーキランプの点滅を見つめるその瞳には、どんな想いが宿っていたのか。
彼女はドアノブに手をかけたまま、足を止めた。暗闇の中で灯る赤い光を、目で追う。5回の点滅。それは、たしかに愛のサインだった。
でも、彼女の心には言葉にできない違和感があった。
「どうして?」
喉の奥で声が震える。君は本当に、今でもそう思っているの?私たちは同じ気持ちのままでいられているの?
ほんのわずかでも、立ち止まって振り向いてくれたなら。ほんの少しでも、「どうしたの?」と聞いてくれたなら。きっと、違う未来があったのかもしれない。
彼女は小さく息をつき、ドアを開けた。振り向くことなく、家の中へと消えていった。
それでも、僕は思い出す。あの帰り際の風景を。君の仕草を。僕たちだけのサインを。
今でも、君は覚えているのかな。あのブレーキの点滅を見て、何を思ったのだろう。
今日のお題は、「振り向かない夜に」