題名:今日のお題は、「新しい生活に胸を躍らせながら…」
報告者:ダレナン
(No.2819の続き)
ようやく資金繰りができ、僕たちは待望のマンションに引っ越した。ベランダからの景色も開放的で、僕たちはいろいろなことに開放された気分だった。
新しい生活に胸を躍らせながら、部屋を片付けていると、絵里子がクローゼットの奥に古びた箱を見つけた。「これ、前の住人のものかな?」彼女はそう言って、箱を開けようとした。何となく嫌な予感がして、僕はそれを止めた。「勝手に開けたらまずいんじゃないか?」
しかし、好奇心には勝てず、結局二人で箱を開けることにした。中には黄ばんだ手紙と、古いカセットテープが入っていた。手紙には、乱れた筆跡で「この部屋に囚われるな」とだけ書かれていた。
不気味に思いながらも、僕たちはカセットテープを再生してみることにした。スピーカーから流れ出したのは、女性の震える声だった。
「ここから…出られない…誰か…助けて…」
その瞬間、部屋の電気がチカチカと点滅し始めた。絵里子が驚いて僕の腕を掴む。「ねぇ、やめようよ、これ…」彼女の声がかすかに震えていた。
突然、ベランダのガラスに何かが映った。…いや、「誰か」が映った。
それは明らかに、僕たち二人以外の「何か」だった。
絵里子が息をのむ。「今の、見た?」
次の瞬間、クローゼットの扉がゆっくりと軋みながら開いた。
そして、真っ暗な空間から、白い手が伸びてきた。
僕たちは息を呑み、凍りついたまま後ずさる。手はゆっくりとクローゼットの縁を掴み、さらに奥から何かが這い出ようとしている。絵里子が小さく悲鳴を上げた。その瞬間、カセットテープの音声が再び流れ出す。
「…もう遅い…」
その声に合わせるように、黒い影が這い出し、床に広がるように滲んでいく。僕は絵里子の手を掴み、玄関に向かって走り出した。しかし、ドアノブを掴んだ瞬間、激しい力でそれが開かない。
「なんで開かないんだ!」
背後から、何かが這う音がする。
絵里子が震える声で囁いた。「……こっちに来る……!」
今日のお題は、「新しい生活に胸を躍らせながら…」