No.2817

題名:今日のお題は、「なにかの何か」
報告者:ダレナン

(No.2816の続き)
目が覚めると、僕は「なにかの何か」になっていた。何かはわからない。ただ、そういう気がした。

部屋の中は普段と変わらないようでいて、何かが違う。時計の針は逆回転しており、カレンダーはすべての数字がゼロになっている。窓の外を見ると、道行く人々は足を地面から数センチ浮かせて歩いていた。

僕は試しに立ち上がろうとしたが、足がどこにあるのかもわからない。手を伸ばそうとすると、腕の感覚がなく、代わりに視界がぐにゃりと歪んだ。まるで、僕自身が空間に溶け込んでいるかのようだ。

玄関のドアを開けようとすると、それはドアではなく、ただの概念になっていた。「開ける」という行為を試みた瞬間、僕はドアの向こうにいた。しかし、その向こうは「向こう」ではなく、単なる「別のここ」であり、何も変わらない。僕はただ、「別のここ」にいる。

街に出ると、すべてが名前を失っていた。コンビニらしき建物には「?」と書かれ、道路標識はすべての文字が反転している。人々の顔も、まるで識別されることを拒むかのように、輪郭がぼやけている。

「君はなにかの何かだね」

背後から声がした。振り返ると、そこには「誰かの誰か」がいた。しかし、それが誰であるかは僕にはわからないし、彼もまた自分の存在を説明することを放棄しているようだった。

「どうすればいい?」と僕は尋ねた。

「どうもしなくていい。ただ、なにかの何かとして在ればいい」

「在るって、どういうこと?」

「それはきっと、在るということさ」

その言葉を聞いた瞬間、僕の意識はぐにゃりと裏返り、僕は「なにかの何か」であることを理解した。それが何かは、もうどうでもよかった。

 実をいうと前回、”なにか”と”何か”を文で使い分けたんです。それはChatGPTちゃんかそれとも僕の偶然の賜物か(笑)。で、今日のお題は、「なにかの何か」にしました。あれっ、いい感じのできやん。

 
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