題名:今日のお題は、「石川さゆりの曲「天城越え」から考える演歌の情念」
報告者:ダレナン
(No.2776の続き)
石川さゆりの「天城越え」は、演歌特有の情念(深い情感や執念)を色濃く表現した楽曲の代表例です。この楽曲における情念は、主に以下の3つの側面から考察できます。
1. 歌詞における情念の表現
「天城越え」の歌詞は、未練や愛憎が絡み合う情念の深さを詩的に描いています。
(1) 禁断の恋と執念
「あなたと越えたい 天城越え」
→ 天城越え(伊豆の天城峠)は、物理的な障壁であると同時に、禁断の愛の象徴。
→ 逢瀬の記憶と消せない想いが強調され、未練が深まる。
「隠しきれない 移り香が」
→ 香り(匂い)は記憶や執着を象徴し、愛する人を忘れられない心情を表現。
「恨んでも恨んでも からだうらはら」
→ 愛と憎しみがせめぎ合う様子。
→ 「からだうらはら」は、理性と感情の間で揺れる情念の深さを象徴。
2. 歌い方における情念の表現
石川さゆりの歌唱には、情念を際立たせる技法が多く使われています。
(1) こぶしとビブラート
→ 「あまぎごぉぉえぇぇ」 のように、語尾に深いビブラートをかけることで、未練と情念を引き伸ばす。
→ 「恨んでもぉぉぉ…」などで、こぶし(細かい音の揺らぎ)を使い、情熱と切なさを強調。
(2) 強弱と間の取り方
→ 「隠しきれない… 移り香が…」の部分では、一瞬の間(ため)を置くことで、哀愁を際立たせる。
→ サビでのクレッシェンド(徐々に強く)は、感情の高まりをダイナミックに表現。
3. 曲の旋律と編曲による情念の表現
(1) マイナー調と和音
→ 「天城越え」は短調(マイナーキー)で構成され、情緒的な哀しみを増幅。
→ 特に和楽器(尺八や琴の音色)を用いることで、和風の情念を強調。
(2) 転調による盛り上がり
→ サビに向かって転調することで、感情の昂ぶりを劇的に演出。
→ 「あなたと越えたい 天城越え」で最高点に達し、執念が爆発するような構成。
結論:演歌の情念の極致
「天城越え」は、愛と憎しみ、未練と激情が交錯する演歌ならではの情念の極致を示す作品です。
歌詞の言葉選び、歌唱の技巧、旋律の構成が一体となり、聴き手の心に深い余韻を残します。
このような要素が組み合わさることで、石川さゆりの歌う「天城越え」は、単なるラブソングを超えた魂の叫びとして響くのです。
今日のお題は、「石川さゆりの曲「天城越え」から考える演歌の情念」