題名:今日のお題は、「夕日が沈みゆく頃」
報告者:ダレナン
(No.2770の続き)
夕日が沈みゆく頃、オレンジ色の光が街を包み込んでいた。僕たちはレンガ通りの道を並んで歩きながら、他愛のない話をしていたけれど、心の中では君のことばかり考えていた。
ふと横を見ると、夕日の光が君の瞳に映り込み、まるで宝石のように輝いていた。その美しさに息を呑み、思わず足を止めてしまった。僕の目が驚きと戸惑いに見開かれていたのを、君は見逃さなかった。
「どうしたの?」
君は壁にもたれて小首をかしげながら、いたずらっぽく笑った。その笑顔が、さらに僕をどぎまぎさせた。
「いや、ただ……夕日が、君の瞳に映って綺麗だなって思ったんだ」
思わず口をついて出た言葉に、自分で驚いた。君は目を丸くしたあと、クスクスと楽しそうに笑った。
「そんなこと言われたの、初めてかも」
「僕も、こんな風に言葉が出るとは思わなかったよ」
照れくさくて頬をかいた僕に、君は優しく微笑んだ。その仕草が、あの夕日のように温かくて、心の奥まで染み渡った。
あの頃の僕たちは、何もなくてもただ一緒にいるだけで幸せだった。夕暮れ時のそよ風が二人の間を通り抜けても、心はしっかりと結ばれていた。
夕日が空に溶けるように、あの時間も過ぎ去ってしまったけれど、それでも君の笑顔と、あの温もりは、今も僕の心の中で静かに輝き続けている。
今日のお題は、「夕日が沈みゆく頃」