題名:今日のお題は、「恋の余韻」
報告者:ダレナン
(No.2769の続き)
高校二年の春。桜の花びらが舞う休日、僕は同級生の早紀ちゃんと初めてカフェに行った。
「ずっと気になってたんだ、このお店。」
彼女は少し弾んだ声でそう言った。
店内は木の温もりを感じる落ち着いた雰囲気で、窓際の席に座ると、春風がカーテンを揺らしていた。僕はカフェラテ、茉依ちゃんはストロベリータルトを頼んだ。
「甘いもの、好きなの?」
「うん。特にイチゴ。」
そう言って、彼女はフォークで小さくタルトをすくい、口元に運んだ。僕はなんとなく、それをじっと見てしまう。
「何?」
「いや、すごく美味しそうに食べるなって。」
「だって美味しいもん。」
彼女は笑った。
カフェを出る頃には、すっかり夕暮れになっていた。橙色に染まる街を並んで歩く。話題はたわいもないことばかりだったけれど、不思議と心が満たされていた。
「今日は楽しかったね。」
「うん。また行こう。」
別れ際、彼女がふと足を止めた。
「ねえ、手、出して。」
言われるがままに手を差し出すと、彼女はそっと、手のひらに桜の花びらをのせた。
「持って帰って、春の思い出にしてね。」
淡いピンク色が、胸の奥にそっと落ちていくのを感じた。
「ありがとう。」
彼女の後ろ姿を見送りながら、僕はそっと花びらを握りしめた。
それが、僕の初めての恋の余韻だった。
今日のお題は、「恋の余韻」