No.2724

題名:今日のお題は、「彼女の夢を支える」
報告者:ダレナン

(No.2723の続き)
演劇の公演が終わり、舞台の熱気がまだ残る中、彼女は劇場の外の歩道にぺたんと座り込んだ。靴を脱ぎ、裸足のままアスファルトの冷たさを確かめるように足を伸ばしている。

「大変な役だったね」と僕が声をかけると、彼女は少し息を整えてから顔を上げ、にこっと笑った。

「でも、充実してるよ。」

彼女の額には汗がにじみ、肩で息をしながらも、満足そうな表情を浮かべていた。その顔を見ていると、僕は彼女の努力の結晶を目の当たりにした気がした。

僕は大道具係だから、舞台袖から彼女の演技を見守ることしかできない。どれほどの緊張と疲労が彼女を襲うのかはわからない。でも、一つひとつの役に真摯に向き合い、全力で演じる彼女の姿を知っている。

彼女が舞台の上で生き生きと輝いているほど、その背後には数えきれない努力があるのだろう。セリフを覚え、動きを身体に染み込ませ、何度も何度も稽古を重ねた日々。それらを支えられるのなら、僕の役割にも意味がある。

「おつかれさま。」僕はそう言って、彼女のそばにしゃがみ込んだ。

彼女は僕を見上げて、微笑む。

「ありがとう。」

その一言が、僕の胸にじんわりと温かく広がる。彼女の夢を支えることが、僕の幸せなのかもしれない。

彼女が歩む道はまだ長く、きっと困難もあるだろう。でも、その道をそばで見守りながら、一緒に歩いていけたらいい。

風がそっと吹き抜ける中、僕たちはしばらく無言で並んで座っていた。

今日のお題は、「彼女の夢を支える」

 
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