題名:今日のお題は、「Mystical Gaze」
報告者:ダレナン
(No.2721の続き)
彼女は不思議な能力を持っていた。じっと見つめると、その人の裏の性格が見えてしまうのだ。
「将来は占い師にでもなる?」
僕が冗談めかしてそう言うと、彼女は小さく首を振った。
「ううん。でもさ、その人の本当の姿が見えるって、嫌なことも多いの」その言葉には、どこか影があった。
「じゃあ、僕の裏の顔はどう?」そう尋ねると、彼女はじっと僕の目を覗き込み、ふっと笑った。
「おしるこが食べたいんじゃない?」
ビンゴだった。思わず吹き出すと、彼女も小さく笑った。しかし、その表情の奥に、ほんの一瞬だけ、寂しそうな影がよぎった気がした。
「ねえ、それってどこまで見えるの?」
興味本位で聞いてみると、彼女はふっと視線をそらした。
「……たとえば、すごく優しい人が、心の奥底では自分のことしか考えていなかったり。すごく明るい人が、誰よりも深い闇を抱えていたり……。そういうのが全部、見えちゃうんだよね」
彼女はまるで、見えなくてもいいものを見てしまったような口ぶりだった。
「だから、ちょっと怖いよ。人を信じられなくなるときもある」
「じゃあ、僕は?」
彼女はもう一度、僕をじっと見た。そして、少しだけ驚いたような顔をした。
「……あれ?」
「何?」
「なんでだろう。君の裏の顔、全然見えない……まるで、霧がかかってるみたい」
「え、僕、そんなに謎めいた人間だった?」冗談めかして笑ったけれど、彼女は真剣な顔をしていた。
「もしかして、私が見てはいけないものがあるのかも……」彼女の目が不安げに揺れる。
そのとき、ふと頭の奥で、かすかな声がした。
『気づくな』
思わず背筋が凍った。
彼女はまだ僕をじっと見ている。彼女の目に映るものが、僕には見えない。
「やっぱり……ちょっと怖いね」
彼女はそうつぶやき、目をそらした。
外を見ると、いつの間にか、あたりは夕闇に包まれていた。
今日のお題は、「Mystical Gaze」