題名:今日のお題は、「風と雪と、君の横顔と、」
報告者:ダレナン
(No.2706の続き)
冬の冷たい空気が、静かに頬をかすめる。二人で歩く石畳の道は、ほんのりと湿っていて、遠くには湯けむりがふわりと立ちのぼっていた。通りの脇には小さな和風のカフェや土産物屋が並び、軒先の提灯が揺れている。
「寒くない?」
僕がそう尋ねると、彼女は首をすくめながら「大丈夫」と微笑んだ。だけど、その指先は少しだけ震えているようにも見えた。僕はポケットの中の手をそっと握りしめた。
ふと、風が吹いた。
彼女の髪がふわりと揺れ、長いまつげがそっと伏せられる。次の瞬間、空から小さな白いものが舞い落ちてきた。
「……雪?」
彼女が驚いたように呟く。風に乗ってくるくると踊る雪は、まるで時間が止まったかのようにゆっくりと降り積もる。淡い光を受けて、白く輝くその一粒が、彼女の肩にそっと触れた。
その瞬間があまりにも美しくて――僕は思わずスマホを取り出していた。
画面越しに映る彼女は、まるで映画のワンシーンのようだった。舞い散る雪の中で、微かに笑いながら空を見上げるその姿は、あまりにも儚く、そして愛おしかった。
「ねえ、撮った?」
ふと彼女がこちらを振り向く。
「……うん。」
僕は少し照れくさそうに頷きながら、スマホの画面を彼女に見せる。そこには、白い雪と風に包まれた彼女の姿が映っていた。
「なんだか、幻想的……」
彼女は画面を覗き込みながら、小さく笑う。その頬は、寒さのせいか、それとも少し照れたのか、ほんのりと赤く染まっていた。
僕は、そんな彼女の横顔をそっと見つめる。
降り積もる雪が、やがて消えてしまうように、この旅も、この瞬間も、やがて過ぎ去ってしまうのかもしれない。だけど、この写真の中には、確かに残る。風が吹いて、雪が舞い、そして僕が彼女に見とれた、この冬の奇跡のような一瞬が。
「もう一枚、撮っていい?」
そう言うと、彼女は小さく頷いて、そっと微笑んだ。
また雪が舞い降りる。僕は、もう一度シャッターを切った。
今日のお題は、「風と雪と、君の横顔と、」