No.2702

題名:今日のお題は、「ノスタルジック・ラブ・ストーリー」
報告者:ダレナン

(No.2701の続き)
 あの頃、SNSがようやく世間に浸透し始めた時代だった。
 僕たちは若かった。新しいテクノロジーに興味津々で、どこへ行くにもスマートフォンを片手にしていた。何気ない日常の一コマを写真に収め、友人たちと共有することが当たり前になっていた。
 そんなある日、僕は彼女の写真を撮った。光の加減も絶妙で、ベッド上の彼女の笑顔がとても綺麗に写っていた。でも、その光景は明らかに僕たちの関係がバレるだろうなと思えた。そこで、何気なく彼女に「この写真、ネットにあげるとまずいかな」と尋ね、彼女にみせた。
 彼女は「やっぱ、まずいんじゃない。だってあたしと拓海の関係って完全にバレちゃうもん」と答えた。
 僕は「やっぱ、そうだよね」と笑った。
 その頃、僕たちはSNSの発展とともに、お互いの距離を縮めていった。離れているときも、メッセージを送り合い、写真を共有し、まるでいつも一緒にいるかのように感じられた。恋人同士の交流の仕方も、時代の流れとともに変わりつつあった。
 あの頃は、まだネットの世界が今ほど厳しくなかった。何をアップロードしても、どこか無邪気で、自由だった。でも、それでも僕たちは、ほんの少しの慎重さを持ち合わせていた。彼女は自分の姿が不特定多数に見られることを避けたがったし、僕もそれを尊重した。
 今では、そんなやりとりも懐かしい思い出だなと思う。今の時代なら、プライバシーの問題や肖像権のことを考えれば、軽々しく写真をネットに上げることはできない。でも、あの頃は違った。
 たとえ写真を公開することはなかったとしても、僕たちが共に過ごした時間、交わした言葉、画面越しに伝えた想い——それらは確かに存在した。
 時代が変わっても、あの頃の僕たちの愛は、確かにそこにあったんだ思う。

今日のお題は、「ノスタルジック・ラブ・ストーリー」

 
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