No.2638

題名:今日のお題は、「リンチの才能の中心的な部分」
報告者:ダレナン

(No.2637の続き)
 でも、事実上「ツイン・ピークス:リミテッド・イベント・シリーズ」が2017年なのでリンチの遺作になるのだろうな。そう考えると、いい意味で充実した作家人生だったと思えます。
 そりゃー「Dune」は失敗作と言われていますが、その後にもディノ・デ・ラウレンティスから製作協力がえられつつ、カイル・マクラクランとともに作家の本領が「ブルーベルベット」にて発揮され、その結果の流れが「ツイン・ピークス」だったことを思えば、下手に大作家になってまうよりも、カルトの帝王とかいわれるまでに我が道をつき進んだ道がめっちゃ正解だったという。
 「エレファントマン」から「Dune」でもし大大大成功していたら、先ごろになくなったデヴィッド・リンチの真の才能は大作の中で埋もれてしまっていたかもしれんぬ。この「Dune」からの「ブルーベルベット」へにいきさつについて、デイヴィッド・リンチの本「夢みる部屋」にはこう書かれています。

「ディノ・デ・ラウレンティスは『デューン/砂の惑星」の問題にもかかわらずリンチへの信頼を失うことはなく、映画の封切り後の騒動がおさまったら、次に何をやりたいか尋ねた。リンチは『ブルーベルベット』がやりたいと答えた。その時点で、ワーナー・ブラザーズ社に売り込まれた『ブルーベルベット』の初期草稿に対する譲渡権が消失し、脚本の所有権はスタジオに戻った。デ・ラウレンティスはスタジオ社長に電話して、権利を買い戻した。リンチは、いっしょに作るのであれば最終編集権は絶対に自分にくれとはっきり要求し、デ・ラウレンティスは、給料と映画の予算を半分にしてもいいなら最終編集権をあげようと述べた。「デイヴィッドはディノが大好きだったわ。ディノが『ブルーベルベット』制作のチャンスをくれたから」とフィスクは語っている。」

と同時に、「夢みる部屋」にはリンチの映画の特徴を端的に示してあります。

「リンチは日常の現実を、人間の想像力と渇望の幻想的な領域と隔てる、あの謎めいた裂け目で活動するほうが好きだし、説明や理解を拒絶するものを追求したがる。自分の映画も、理解されるよりは感じて体験してほしいのだ」

ということになります。さらにはリンチのその才能についてこういう記述があります。

「リンチの才能の中心的な部分が、その創造力の流動性だ。彼はそこにないものを探すのではなく、身の回りにあるものをもとに構築する。そしてこれは、いっしょに仕事をしたあらゆる人が言及していることだ。シェリル・リーは語る。「デイヴィッドが教えてくれた最も重要なことの一つは、本当に現在に生きること です。彼はすべてのものに注意を払い、身の回りで起きていることに何でも適応して、それを芸術に変換します。彼は何かのあるべき姿とかにこだわらないからです。これが彼と現場にいるときのスリルの一部だし、それがあんなに活気がある理由の一つなんです」。今日のお題は、「リンチの才能の中心的な部分」

 
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