No.244

題名:ハムスターの頭を良くするには
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.243の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 No.242にてハムスターの愛玩性と彼ら(彼女ら)の一日を考えるとともに、No.243にてハムスターの一生と彼ら(彼女ら)に接する際のヒトの知能としての大事な側面について触れた。ここでは、ハムスターの(ハムスター的)知能をより向上させる方法として、どのような方法があるのかを探ってみたい。
 愛嬌のあるハムスターを、さらに愛嬌を持たせるために、少しでも目の前のハムスターの知能をよりよくしたいと願うのは、ある種育てる側の親心でもある。ハムスターを家庭で飼っている人なら誰でもがそう希望するであろう。もちろん、人間の赤ちゃんとは異なり、その知能には生物学的に限度はある。しかしながら、神経科学において、脳ニューロンのネットワークは生涯に渡って発達し、そのネットワークが複雑になればなるほど、高度な情報処理が可能となる。それは、ヒトでもハムスターでも同じである。それでは、どのようすればハムスターの脳ニューロンのネットワークを複雑化できるかと言えば、それを図で示す。図はマウスによる実験ではあるが、左は通常の育て方、図の右は環境が豊富な育て方として、その下にその環境下で育てた脳のニューロンの発達状態が示されている。図を見て明らかなように、右の環境のマウスの方が発達している。このようにして豊かな環境で育てる方策を、環境エンリッチメント2)と言う。最近では、動物園などにおいて、動物の異常行動を減らす目的として、あえて豊かな環境(野生

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図 標準の環境と豊かな環境で育てたネズミの違い1)

に近い環境エンリッチメント)を作りだすことも少なくない。
 一方、ラットの実験において、このように豊かな環境で育てられたラットは、成熟後に様々な学習課題をうまくこなす。さらに、驚くべきことにその環境下で育てられたラット母の、その子どもラットも、学習成績が優れていることが知られている3)。そこには、その環境には、脳の解剖的な変化をもたらすきっかけがあることを意味する4)。
 実験室での環境エンリッチメントの研究は、その対象に多くがマウスやラットを用いる。しかしながら、基本的にハムスターも同じ仲間である。そのため、ハムスターの頭を良くするには、この豊かな環境を提供できることがキーとなるであろう。もちろん、ヒトからの彼ら(彼女ら)への愛情も欠かせない(No.243も参照)。

1) https://science.education.nih.gov/supplements/nih4/self/guide/info-brain.html (閲覧2016.4.12)
2) 安江みゆき: ラットを用いた環境エンリッチメント評価研究の意義. 人間社会研究科紀要 18: 169-184, 2012.
3) 岡市広成: 行動の生理心理学. ソフィア. 1995.
4) Rosenzweig MR et al.: Brain changes in response to experience. Sci. Am. 226: 22-29, 1972.

 
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