No.2163

題名:外の世界
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.2162の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 初めて外の光をまじかに見た。目のあたりが赤く染まり、光も赤く輝いていた。そして、僕はそれをきっかけに肺に空気を入れ、僕は呼吸することを覚えた。

(ここはマヤの空気と違う…)

 俺がその瞬間感じたのは、そういう思いだった。その想いと交代するかのようにひもらしき管が切られ、僕に入れ替わり、俺は僕になった。そう、今や田宮花江の子だ。

「おぎゃーおぎゃー」

「男の子ですよ…」

 僕を外の世界に導いてくれたその人は、僕は男であることを確認していた。両足の付け根にぶらぶらと小さな突起物がついていた。僕は大事に抱きかかえられつつ、田宮花江の手の中に渡された。母は幾分疲れていたが、満面の笑みを浮かべて僕を見つめていた。
 傍らで男の人が立っていた。マッシュルームのような妙な髪型をしたミュージシャンもどきの人だった。それが僕の父、田宮潔だったのだろう(後でいろいろと分かったことだが…)。その父らしき人は、小さなギター、ウクレレ…? をいきなりその場で弾き始め、さらに歌を歌い始めた。

ヘェイジュゥード、ドンメッキーバー
ティカサッソーン、アーメィッキンベーダァ
リィメンバ、トゥレティインニョーハー

「花江…、この子の名前が決まった。平十郎…平らに、十に、郎…。田宮平十郎どう?」

「ちょっと古風じゃないかしら…」

「そこが今の時代にぴったりなんだな」

デェニュケン、スター
テゥメキン、ベーラ

ヘェイジュゥード、ドンビィアフォエー

 
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