題名:Beginnings of The New World
報告者:ダレナン
あれから16年経った。月日が経つのは早いものだ。
俺の名はカルロス。カルロス・タミヤ・アル・ロドリゲス。
名のタミヤは古いルーツを辿れば、田宮とも書ける。その名の通り、俺は日系人で、祖父は日本人になる。ただ、それよりも古い先祖を辿れば、俺には先住民の血も流れている。古代から続いたマヤの系譜だ。だから、俺には3つの血が流れていることになる。マヤ人、スペイン人、そして日本人だ。
その血の中でも、やはり俺は祖父に最も影響を及ぼされたと言えようか。
だから、今でも流暢に日本語を話すことはできる。それは近代的な日本語ではないにせよ祖父の時代の日本語として今でも駆使することはできる。通常の日本語会話ぐらいなら問題ないくらいだろう。この前に出会った日本人商社の人も、まったく話す際に変な違和感はないと俺に教えてくれた。そして、俺はといえば、風貌もどことなく祖父に似て、初めて出会った人は俺の事をアジア人と勘違いすることも多い。それが、いいのかわるいのか、今はなんとも言えないが…。
そんな俺に転機が巡ったのが、16年前だった。あの日のことは今でもよく覚えている。
太陽の日差しがさんさんと降り注ぐ中、俺はあの人に出会った。
ディメルデ・フュィー・アル・カベル。それがあの人の名前だった。
実は、アル・カベルという名は、俺ら一族にとって特別な名だった。その名を聞いた時に、俺はピンと感じるものがあった。その名の冠は、俺らの世界では古代マヤに通じる女王を意味していたからだ。
「彼女は、我ら一族の女王の末裔に違いない」
俺は、そう直感した。
彼女の話し方も雰囲気も、まさに女王然としていたこともその感じに拍車をかけた。
そう感じたのは俺だけなのだろうか、とその時は思いつつも、この後の物語で、如何に彼女が我々の女王として間違えていなかったことを伝えることが、今の俺のすべてだ。
すなわち、それを伝承することが、今の俺に与えられた定めなのだ。