題名:”僕”との間
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.2093の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
夢といえども、もう一度ジェニファーに逢いたくなった自分がいた。もう遠い過去のアメリカ時代のことなのに僕はジェニファーとの過去の時間に見事に縛られていた。まるで、僕の心は、八度まもるのプラひもに縛られているかのようだった。そう、あの二人で過ごした夜の時間を…。
「ジェニファー…、ズット、アイシテル」
と、僕は何度もささやきながら、彼女の唇と首筋、その他に何度もキスを交わした。そのたびにジェニファーは吐息を漏らした。僕はこの先どうなろうともジェニファーのことを愛さずにはいられない。それを痛感して、僕は…夢の中でも何度も何度も…、彼女の扉を、ノックを繰り返した。
彼女の扉のノックを、繰り返した。
僕は、彼女との想い出を反芻しないわけにはいられない。
それが、あの時代の僕の青春そのものだった。
それが、あの時代の僕そのものだった。
その時、自分の部屋の扉をノックする音がして、僕は目が冷めた。目をこすりながら僕の前には「夜の不時着」を見終わって満足そうな妻が扉の向こうに立っていた。妻は知ってか知らないかは別として、その時の僕の□□はいささか膨らんでいた。
「今、暇?」
僕は寝ぼけた眼で、「仕事していたけれども…」と嘘を答えた。手にはpatient O.T.の論文を持っている。でも、妻には論文を読んでいたふりをしていても、「DS-31」のチェアで眠気眼な僕に対して、明らかに真実を見出していただろう。僕がうつろでチェアで寝ていたということを。ただ、□□の膨らみに関してはバレていないといいが…。ジェニファーとの記憶は、僕の首をいつまでも締め上げ、それなのに何時でも興奮させる。八度まもるがプラひもで首を締め上げるのを求めているのは、彼ではなく、僕なのだろうか…?。
「ちょっと手伝ってくれる?」
と妻は言う。僕は「はい」と答える。
そうして与えられた仕事は、1階と2階の廊下の掃除だった。妻は「私は各部屋の掃除をするから、廊下だけ英明、掃除してくれない?」とのことだった。
くれない、それは、紅に染まったこの俺を慰める奴はもういないってことでもあるのだろうか。
慰める…? それってジェニファー? 過去のジェニファー?
そういえば、メールで彼女の息子がハーバード大を卒業したとあった。メールにはそう書いてあった。なんだか急に嫉妬した。彼女との間にある息子とは、本当は、”僕”との間じゃなかったのか…と。