No.1963

題名:すくすくとヒヨコは育った。
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的に No.1962の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 …トレードオフ、} なんかかっこええ表現やな。そう思えるで。でもな、本当はよー分かっとらん。白状しちちゃろか。
 よー分かっとる、と、よー分かっとらん、が、拮抗しちょる。それがトレードなオフなんや。たぶんな。
 まっ、そげんこつはどーでもよか。ピーター・ウォード氏が述べとることや境に。
 {ここで、最も大事なことをいうべか。ついに。伝家の宝刀や。電荷の放投や。そして殿下の放蕩や。

 「殿下。最近遊びすぎやおまへんか。もうちょっと国の事も考えてくれなはれ」
 「ええい、うるせい、家老や。お前の言うことも、わしぁちょっとは理解しとる。
 でもな…、国益を伸ばすためにはな…、実は放蕩せなあかんのや。
 放蕩が大事なんや。今はそういう時代なんや。放蕩や」
 「でも、殿下…」
 「お前に、もはや分からぬか。この時代の流れが。
 いいか、もしこの先もわしにそげんこつ言うようやったら、おみゃを切り捨てるでー。切り捨てちゃうで」
 「そればかりはご勘弁を…。殿下…」
 「どうや、わしの言うことも理解でけたか?」
 「ハハー。殿下。仰せの通りに」

 そうして、“かるしゅうーむ”摂っとるワイらのハハー、通称かーちゃんは、次第に子孫を残す確率が多くなった。
 ワイらは強固な殻に包まれることで、中のヒヨコのうまそうな匂いも猛者にはもれへん。そして、第一、堅い殻は強固にしたワイらのヒヨコは、明らかに次の世代に受け継がれた。
 そうなんやで。実はな、シェルター(テント)は2種類あったんや。一つはシングルウォール、もう一つはダブルウォール。シングルは一つの、ダブルは二つの、そしてウォールは壁やと訳せばええ。つまりな、一つの壁、二つの壁、それがテントの構造なんや。
 これが、それぞれに一長一短がある。シングルウォールは、シングルだけにウエイトが軽い。しかし、居住性はダブルウォールに軍配があがる。結露に対してはダブルの方が断然よい。ただし、二枚はウエイトが増し、収納もダブルでしないといけない。しかし、タマゴならシングルよりもダブルに選択の余地がある。そう、通称かーちゃんは、ワイらタマゴにもダブルウォールを採用したのだ。それは軽量よりも居住性を選んだことにもつながる。
 内膜で液漏れを防ぎ、外膜で外敵を防ぐ。すくすくとヒヨコは育った。
 完璧なソロヒヨコによるヒヨコキャンプは、こうしてワイらの血族に受け継がれ、それが現在のニワトリの先祖となる}
 ここでピーター・ウォード著「ヒヨコの羽」の第一章が終了した。

 
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