No.1788

題名:ゴキがいる
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1787の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

真っ黒な宇宙服を着た人:「そこまでは、デューン計画までは、君の記憶にある話、ちゅうこっちゃな。この際、君が月に来てから200年経っていた、今ここにいる、でもなぜか君は200年に地球に還っていた、そこらへんの点はいったん棚上げしておこうか」
僕:「はい、棚上げできないような不思議な点ですけど…」

「我々が詳しく知っているのは、そのフランコ・ハバド氏の以降の時代、だろうな。だから、君に話すには、デューン計画以降のMoon Townでの出来事。そうなる…、だろうな…」

 そういって、その人は頭部のヘルメットを完全に脱いだ。すると、なぜか違う、と感じた。何かが僕と違う。そうだ、目がかなり大きい。顔、いや正確には頭の部分が異様に大きい。鼻が小さく、口も小さい。指もよく見ると6本ある。やっぱり宇宙人…?

「だいぶ妙な目でこっち見てるが、もしかして我々の姿か…」

「はい、そうです」

「これはな、月で生まれて育ったらこうなる。これが標準なMoon人の姿。もしかして宇宙人に見えたか…?」

「いや随分と違うなぁと思いまして…」

「もともと我々の先祖も地球人やったんや。しかしな、移住計画、フランコ・ハバド氏の新新世代のノアの箱舟が実行されてからすでの我々は、Moon人の3世代目となる。体がこんな風にこっちの環境で適合してしまって、もはや地球に還ることはできんのや。地球に還れば、我々は死んでしまう。だから、我々にとって、ここが故郷、ちゅうわけや。悲しいことにな…」

「なるほど、そうでしたか。(ところで、フランコ・ハバド氏の新新世代のノアの箱舟って…?)」

 気が付くと、フロアにはカサカサと音がして黒い物体が一匹、足早に走行していた。それは、どうもゴキブリらしかった。こんな月の宇宙船の片隅にも、ゴキがいる、のか…。

「そこに、ゴキブリらしき生命体がいましたが…」

「あー、それか…。いわゆるゴキブリやで。このゴキが、新新世代のノアの箱舟の功罪なんや…」

 
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