題名:宇宙へ飛び立つ前
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.1769の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
祖祖父から輸入商を営んでいた僕の家系は、比較的裕福な家系だったといえる。そのため、庭の敷地も広く、動物は、犬、馬や鶏はもちろんのこと、ラクダも飼っていた。それがこぶちゃんだ。
父:「明日からアラブの方に行くから何が欲しい?」
僕:「ラクダ。月の砂漠を歩きたいんだ。そのラクダと」
父:「わかった」
そうして、父がアラブから戻ってくると、船室には父に連れてこられたまだ小さいラクダがいた。でも、小さくともしっかりとこぶはあった。そこでこぶちゃんと名付け、その日から庭で飼うことにした。
意外とラクダは頭の良い動物だった。それとも、こぶちゃんが優秀だったのだろうか。同じく飼っていた犬のジョンよりも、お手するのが早かった。家のペットの世話をしていた堀内さんも、こぶちゃんの頭の良さには一目置いていた。そこで、僕はこぶちゃんの能力を伸ばすべく、こぶちゃんと積極的に遊ぶようになった。この時点で、すでに堀内さんよりも僕の方がこぶちゃんの世話を頻繁にしていた。その世話は、僕が10歳になるかならないかぐらいからの事なので、ざっと10年以上、こぶちゃんの世話係だったともいえる。宇宙へ飛び立つ前は、こぶちゃんはすでに簡単な計算ができていた。
僕:「こぶちゃん。3たす2は」
こぶちゃん:「ンゴォォォォォォオオオオオオオオオーーッ!」
僕:「あってる。さすがこぶちゃん」
こぶちゃん:「ンゴォォォォォォオオオオオオオオオーーッ!」
そのうち、こぶちゃんの部屋で一緒に寝るようにもなっていた僕は、幼いころから夢見ていた月の砂漠を歩く、ラクダと歩くというその夢を、横にいるこぶちゃんといつか見た夢として、頻繁に見始めていた。その時からすでに、こぶちゃんと月世界を歩いている、そんな未来が見え始めていたのだろう。
僕:「こぶちゃん。いずれ月の砂漠、宇宙へ行くよ。僕と一緒にね」
こぶちゃん:「ンゴォォォォォォオオオオオオオオオーーッ!」