題名:愛というベールを纏ったその存在
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.1650の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
「もう半分…なの?」。琉花、晴美:「うん♡ そう…」、と琉花と晴美さんの映像化は告げた。でも、この広い山の中で、もう半分なんて見つかるのだろうか? 確かに、しじみにしてはかなり大きい方だ。太古のしじみは、すべてこの大きさだったのかもしれない。でも、それでも、この山に比べると、小さな欠片でしかない。その存在は、愛というベールを纏ったその存在は、僕のこころの中では、とてつもなく大きな貝殻であっても、物理的に観れば、やはり小さな欠片。はたしてその半分は見つかるのであろうか。
(琉花、晴美さん、教えてほしい。もう半分がどこにあるのか…?)
ふと、かつての、愛おしいベールを纏った琉花の姿が脳裏に浮かぶも(図)、さっきのような厳格な映像化(No.1650)は、琉花にしろ、晴美さんにしろ、目の前に現れることはなかった。
図 琉花1)
(とりあえず下山しよう。そして、あの貝殻の化石を拾ったテントのところまで降りてみよう)
でも、ここにきて、昨日の右足の激痛がぶり返したようだった。容易に降りることが出来そうにない。そのうち、その右足をかばったせいなのか、左足にも痛みが生じた。このままでは、とても今日中には降りることは無理かもしれない。
ちょうど8合目まで降りてきた当たりで、ビバークできそうなよい場所を見つけた。足の痛みをこらえながら、なんとかそこに雪洞を掘った。掘った後、すぐにマットを敷き、その上で身体を休めた。腹ごしらえをするために、ザックの中を調べたが、食料は、すでにカロリーメイトがわずかしか残っていなかった。
テントから放り出された時(No.1645)、ザックとアイスアックスはなんとか無事だったが、たぶんテント内で食料が入っていた袋をそこに残してきてしまったようだった。事実上、昨日のカップラーメンが唯一の食料で、カロリーメイトは非常食として用意したものだった。(なんてこった)。
今日の昼までには家に戻ると、妹のアサリには告げてあったが、このままでは帰れそうにない。スマホの充電もすでに0%になっていた。これでは、連絡もとれない。もしかして、明日になれば、アサリは相当に心配しているかもしれない。僕が山に出かけた時は、かつて、一度も帰宅する時間を守らなかったことがなかったからだ。とりあえず今は、雪をクッカー(ドイツ語でコッヘル)に入れ、バーナーに着火し、その火でこころを落ちつかせた。そして、出来上がった湯を飲みつつ、カロリーメイトを食べた。
1) https://www.instagram.com/p/BKPKsiiAM1c/ (閲覧2020.3.3)