題名:”愛してる”。これだけは、間違いなかった。
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.1612の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
琉花の不安そうな原因が分かった。そういうことだったのか(No.1612)。あの時、酩酊してしまい、琉花にはわるいことをしてしまった。もし、僕が晴美さんに寄りかかることがなければ、あの晴美さんからの香りはそれほど気にならなかったかもしれない。しかし、今となっては、もはや起こってしまったこと。遠くからでもその香りに翻弄される。だから、今日一日は、どうなってしまうのか。僕自身も心配だった。
ただ、その香りを放つ晴美さんは決してわるくはない。しいて言えば、僕の鼻のせいだろうか。しじみの鮮度を極めるためにたぶん自然に身についた嗅覚。それが原因かもしれない。
でも、本当のところ、嗅覚ではないのかもしれない。僕のこころが、浮ついている。
それが原因だ。
「カツオくんは、晴美のことどう思ってる?」
「素敵な人だなーと思うよ。それに、琉花の友達だろ。お互いに、この地域の調査してるし。でも、琉花に対する気持ちと全然違うよ」
そう言いながら、すこし胸が痛んだ。僕は、琉花に嘘をついている。でも、琉花への気持ちは、”愛してる”。これだけは、間違いなかった。
「わかった…。あっ、もうそろそろ時間だね。晴美と待ち合わせの」
「ほんとだ。じゃぁ、行ってくる」
「うん。気をつけてね」
僕はアパートの階段を下り、すぐにZX-10Rに乗った。そうして、組合に向かった。組合に着くと、軽トラまで向かい、伯父から預かっていたキーを差し込み、エンジンをかけた。軽トラは、すこぶる快調であった。ただ、少しだけ車内には魚の匂いがしていた。僕はそれに慣れているが、晴美さんは大丈夫だろうか…。
待ち合わせの場所に行くと、晴美さんが待っていた(図)。
図 晴美さん1)
「ごめん、すこし遅れた」
「あれっ、軽トラなの。バイクじゃないんだ…」
「組合長の伯父の軽トラなんだ。だから、もしかして車内が魚臭いかもしれないけど…」
「ぜんぜん平気。わたしもそれに慣れてる」
1) https://fashionbox.tkj.jp/archives/201356 (閲覧2020.2.6)