題名:殺気までの殺気立った自分
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.1534の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
口元から滴り落ちるその赤紫の液体は、時としておフランス製のような芳香を放ち、それに贖うことができないぐらいに、僕は、俺は、何かを求めていた。再び鏡を見直すと、いつもの自分の姿がそこに映った。殺気までの殺気立った感じはもはやない。魔術的なセレマでもって、邪魔になる要素をすべて取り除かれたのであろうか(No.1534)。コンコン、ガチャ…ドアが開いた。
「ガエールさん。体調の方はいかがですか。検査では特に問題はないようでしたので、担当医からは「もう、帰って大丈夫だろう」とのことでした。今日で帰ります?」
看護師さんからそう告げられた。ただの、単なる低血圧だったのかもしれない。先ほどの鏡に映った殺気までの殺気立った自分は、どうやら僕の勘違いかもれない。
「大丈夫です。帰れそうです。ところで隣の病室がえらくバタバタしているようですが、何かあったのですか?」
「ガエールさんには、関係ないことですけど…。何かあったみたいで…。それじゃ、帰る準備をしますね」
そう告げられた。でも、先ほど、聞き耳を立てた時、それが異常な状況であることもなんとなく理解できた。でも、その看護師さんからは何も教えてくれそうにない。その時、ふと口元の芳香によって血潮が沸き上がり、自分でも驚くぐらいに眼光が、あのころの眼光(No.1491)が黄泉がえり、それを看護師に向けたとたん…、
看護師:「ガエールさま。実はいうと、隣の海野さん、海野クルシミールさんのことですが、お父様がおフランスの方で、日本に来て執筆されていた小説家なのですが、なかなか次の小説のイメージが沸かないとのことで、頭の中が沸騰して入院されていた方なのです。だいぶ体調も戻られて、明日は退院、というクランケなのです。が、なぜか、先頃に、何者かに首筋を噛まれて、先頃、絶命されたようです。その理由を探っているのですが、なんといっても海野クルシミールさんは、良家のお嬢さまで、「これ以上、事件を公にしてほしくない」とのお父上の相談もあって、病院側では秘密裏に処理されるみたいです。病院側としても、偏執的な外部の者に殺害された可能性があるとあって、公にはしたくない、そう、病院長も判断しています。そこで、話し合いで表向きには、多臓器の出血多量による死亡とされるようです。が…、はっ」
図 看護師さん1)
そこで、看護師さんが通常の雰囲気に戻られた。
1) https://www.irasutoya.com/2013/03/blog-post_6741.html (閲覧2019.12.29)