No.1527

題名:苦渋の決断
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1526の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 休憩時間も終わり、タンちゃんの二胡でますますニコニコするおやっさん(No.1526)。ここ猫ラーメンの店の中で、ラーメン作りに対するいい循環が生まれていた。ただし、間違いなく客は、たぶん僕が勤め始めたころに比べて、3倍、いや5倍近くも増えているであろうか。もちろん仕込みの量もそれに合わせなければならない。ここで、味がブレるといけない。それは、おやっさんの嫁さんへの愛、その結晶もブレることになる(No.1522)。だから、大事な仕込みの過程では、いつもおやっさんの手によった。ただ、ここのところ、その量が日増しに増えているので、おやっさんも大変そうだった。

「おやっさん、仕込み手伝いましょうか」

「いやいや、まだまだいけるでー、おっちゃんはまだまだいけるでー。それは嫁に対する愛なんや。逢いとうなって仕方ないんや。だから、頑張るでー」

「でも、これ以上仕込みが増えると、味がブレるのではないかと心配で…」

「そっ、そうか。味がブレる…。そうやな、そうしたら嫁にも顔向けできへんな」

タンちゃん:「おじさん、毎日のお店のラーメンの数量を決めたらどうかしら。それだと、ブレないし、終わった時点で閉店しても、いいと思うよ。私も味がブレるのは、反対」

おっちゃん:「せやな。そういうのもありやな。嫁のためのラーメンの味がブレちゃしょうがねーもんな。でも、ラーメソ食べたい(図)と遠路はるばる来てもらった客には申し訳ねー。でも、しゃーないな」

 そこで、その日からラーメンの数量を限定した。そのため、仕込みも同じ分量でいけた。ただし、閉店後に後から来る客には申し訳ない感じもしたが、やはり猫ラーメンの味がブレるようでは、猫ラーメンの味を楽しみに来る客に対して申し訳ない。おやっさんの苦渋の決断だった。

図 ラーメソ食べたい1)

1) http://sakaue.tokyo/archives/657.html (閲覧2019.12.25)

 
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