No.1083

題名:「Deeplooks」を用いて、美しさの象徴性から、汎用性のある能面の表情を探る
報告者:ナンカイン

 本報告書は、基本的にNo.1082の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書にて、能について理解を深めるために、能面の特性と能のもつ物語りの特徴から調べた。ここで、能面に再び焦点を当て、顔面偏差値を採点するAI(人工知能)の「Deeplooks」を用いた検討を試みたい。
 「Deeplooks」は最高5.0を満点とする顔面の美しさを評価するAIである。文献1)にその詳細が詳しく述べられているので興味のある方は参照していただきたいが、そのアルゴリズムは主に次の3つのファクターで判定している。①両目の間隔、②鼻と口の位置関係、③瞳の大きさである1)。ただし、詳細なアルゴリズムは、「Deeplooks」のサイトでも示されてはいなかったので、上記の3つ以外も実際はあるかもしれない。そのアルゴリズムを、ディープラーニングによる機械学習を利用して、数万に及ぶ顔画像に対して点数付けし、美しいとされるモデルの基準でもって特徴を自動的に抽出する1)。
 この「Deeplooks」にて芸能人などの顔の美しさを評価でき、多くのサイトでもそれが散見される。例えば、石原さとみさんは5.0と判定され1)、筆者が行っても同じ結果となった。その他に、調べると、長澤まさみさんが5.0、白石麻衣さんが4.7、新垣結衣さんが4.5、新木優子さんが5.0という結果になった。ただし、同じ人物でも顔が傾斜している画像はやや低く判定されるようであり、その場合、新木優子さんは4.7、図1のペ・スジさんの画像も傾き補正(図の黒い部分で、時計回りで55度)したものの、4.7という結果となった。個人差はあろうが、個人的、かつ、主観的な判断の元では、図1のペ・スジさんは美しいと感じる象徴性が感じられることから、5.0であっても不思議はない。そこは、若干、個人的な意見も入っているかもし

図 ペ・スジさん2)を改図

れないが、やはり「Deeplooks」のアルゴリズムの限界をも示しているのかもしれない。
 一方、能面の表情は無表情とも言える。その造形は能面の基本的な技法である上を向けば「照らす」、俯けば「曇らす」となるも、その無表情性はもっぱら美しさを表すよりも、能面の分類であり、顔の表現でもある神面、男面、女面、変化面、鬼面との対応に合わせて造形されている3)。そのことから、あえて観る側にそれらの表情を象徴として与えるよりも、「おもて」としてその内面を汲み取らすことに、能面らしい「幽玄さ」があるのかもしれない。そこで、試しに、能面の代表でもある能面の小面(図2)を「Deeplooks」で評価させると、2.5という結果となった。最高5.0の半分であることから、そこには美しさなどの象徴性よりも、汎用性のある表情(0~5.0どちらとも取れる)として造形されている可能性も示唆された。

図2 能面 小面4)

1) https://ledge.ai/deeplooks_ai/ (閲覧2019.2.21)
2) https://www.pinterest.ph/pin/737745982687102607/ (閲覧2019.2.21)
3) 水谷靖: 能面の歴史: 造形的視点から捉えた能面. 共立女子大学・共立女子短期大学総合文化研究所紀要 20: 39-49, 2014.
4) http://www.emuseum.jp/detail/100431/025 (閲覧2019.2.21)

 
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